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そのまま二人で特に何をするでも無く、話をしていたらあっという間に時間が過ぎ、終了の放送がかかる。後半は鬼ごっこ中というより普段の自室での過ごし方と同じだった。 嵐ちゃんとは体育館の入口で別れ、自分のクラスへと合流する。 「レイラ君!逃げ切ったんだね!」 「凌も最後まで残ったみたいじゃん!」 手首に巻かれたままのリボンを確認し、互いの成果を確認する。他にも逃げ切ったクラスメイトがちらほらといるようで、俺達のクラスはなかなかの好成績なんじゃないだろうか。 「あれ?要は?」 「要はね、前半は上手く逃げ切ってたみたいなんだけど、残り時間10分で鬼に見つかって追いかけ回された挙句、残り2分のとこで捕まったって」 「まぢありえねぇー・・・。角曲がった瞬間に鬼が12人だぜ?」 あらら。要は最後の最後でやられちゃったのか。3人に追いかけられただけでもバテた俺とは違い、12人相手に約8分逃げただけでも凄い。 「みなさんお疲れ様でした。ただいまより結果発表を行います」 いよいよ結果発表が始まる。さっきまで自由に話していた生徒達が静かになり、壇上で話している響ちゃんへと注目する。 「では、第5位1-Cポイント6、第4位1-D・・・」 結果が発表される度に上がる残念がる声やお互いの功績を讃え合う声に、みんなが鬼ごっこを楽しんでいた事がわかる。 残るは1-Sと1-Eの2クラス。1-Eはスポーツ特待生の集まりなので、キングとナイトのポイントが一般クラスより低めの設定らしい。それなのに上位に残るとは、やっぱり身体能力が優れているのだろう。 「第2位は1-Sポイント16、優勝は1-Eポイント17です。おめでとうございます!」 「「「よっしゃーっ!!!」」」 1ポイント差での2位。惜しいっ。喜びに肩を叩き合うEクラスを横目に、嘆き声を上げるSクラス。Eクラスの代表が壇上に上り、騎麻から優勝景品を受け取っている。やはり今年の景品も"シェフの気まぐれスペシャルメニュー"の食券一ヶ月分だったみたいで、それを目当てに頑張っていた俺達は更に落ち込んだ。 「続きまして、最後まで逃げ切った一年生35名は壇上に上がって下さい」 「俺達だね。行こう凌」 壇上に揃った35名はそれぞれクラスごとに並んでいく。そこで分かったことだけど、なんと1-Sは逃げ切った人数では1-Cと同率ビリだった。キング様々だなこりゃ。 「みなさんに今から配るのは"お願い券"です。こちらに希望するお願いを書いて、担任に提出してください。その後生徒会で妥当な願いであるかを吟味し、その後実現します」 よく考えて提出してくださいね。そう微笑みながら響ちゃんが一人一人にお願い券を渡していく。 「おめでとうレイラ君」 「ありがとう響ちゃん」 俺の前に来た響ちゃん。今日も抜群に癒しの王子様全開です。絶好調だね! それにしてもお願い券のことは完全に忘れていた。お願いと言われてもなかなかすぐには思い浮かばない。 「凌は何お願いするの?」 「俺は学園の公認カップルである二年の高山先輩達のラブラブデートを一日間近で観察する権利とかどうかと考えてるんだけど許可がおりるか際どいラインなんだよね」 え、ちょっと怖いんですけど。流石にそれは許可して欲しくない。間近で見てどうするんだよ。あれか、萌えるのか。凌がよく言ってる萌えるってやつか。・・・いつか凌が捕まらないか心配だ。 「さぁみなさん、走り回ってお腹も空いてきた頃だと思います。12時より食事会になりますので、遅れないように支度を済ませて来てください」 食事会までは約一時間程時間がある。その間にみんな寮に戻りシャワーを浴びたりしてから着替えて再集合だ。

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