放課後いつものように部活のある凌とは別れ、普段なら要と一緒に寮に戻るんだけど、今隣にいるのはクラスメイトで生徒会書記の蜂須ケイ。小柄な体型と笑顔が可愛い生徒会のマスコット的存在のケイと一緒に向かう目的地は生徒会室。 「お疲れ様です！レイラ君連れてきました！」 元気なケイに続き生徒会室に足を踏み入れる。初めて入った生徒会室はコの字に机が並び、ふかふかの絨毯や壁際に飾られた花瓶などが、社長室を思い浮かばせる造りだった。ま、十六弥くんの部屋は全くそんな雰囲気ではないので、あくまでイメージだけど。 「いらっしゃいレイラ君。久しぶりだね？」 まず視界に入ったのがいつもの優しい笑顔で迎えてくれた響ちゃんの姿。会うのは約二週間ぶり、食事会で会って以来だ。久しぶりの再開を祝してとりあえず抱き着く。今日もフローラルな香りが全開です。 「響！独り占めしてないで早く俺達にも紹介してよ！」 そう言い響ちゃんの後から顔を出したのは黒髪短髪の爽やかな人と、らんちゃんより更に大きいと思える赤茶の髪をオールバックにしたワイルドな大男。 「はじめまして、二年で生徒会庶務の間宮貴一。よろしくね！」 「俺は同じく二年で生徒会書記の山野井鴇だ。よろしく」 交互に握手を交わす。んー、まみちゃんとのいちゃんだな。立っているのもなんだからと、中央にあるソファへと勧められる。そこには様々なお菓子や料理が用意されており、それを囲む様にみんなで座る。 全員が席に着いたタイミングで、入口が開き荷物を抱えた騎麻が入ってきた！ 「お、みんな揃ってるな！」 「遅いよ騎麻、先に始めちゃうとこだったよ」 ごめんごめんと言いながら俺の隣へと腰をおろす。奥の冷蔵庫からジュースを持ってきたケイからそれぞれ飲み物を受け取ったところで、 「それでは生徒会恒例、長期休み前のお疲れ様会をはじめまーす！かんぱーい！」 騎麻の乾杯の合図に合わせみんなでグラスをぶつけ合う。今日は生徒会が長期休み前に行う、「今回もよく頑張った、休み明けからまた頑張るぞー！」という、お互いの仕事を労い合うお茶会に特別に招待されたのだ。 「俺ずっとレイラ君に会ってみたかったんだよ！なのに騎麻も響も自分達ばっかで全然合わせてくれなくて」 「俺だってレイラ君に会うのは久々なんだからね」 何でも噂だけは沢山入ってくる生徒会長の親戚でTOKIWAの人間である俺に会ってみたいが、なかなかチャンスがない。だったらもう一層呼び出しちゃえ！ということでこのお茶会に呼ばれたらしい。俺は美味しい料理とお菓子が食べられるので何でも良いんだけどね。 「にしても、何度か姿は見たことあったが、凄い見た目だな」 まぢまぢと顔を見られる。それは本当に穴が開くんじゃないかって程まぢまぢと。頭を撫でられたり、頬っぺたをふにふにされたりと自由に観察される。 「ここまでの人材うちの会社にも居ないぞ。一度うちの事務所に見学来ないか？」 「事務所？」 のいちゃんの母親は今人気のタレントや俳優、モデルなどが多数所属する有名な芸能事務所の社長らしい。そして見た目の良い人間を見つけては声をかけるのが趣味なんだって。どうやら俺はそのお眼鏡にかなったみたい。ありがとう。 「こらこらうちの子を勝手にスカウトするんじゃないぞ」 「もちろんお前も大歓迎だぞ騎麻」 生徒会のメンバーはみんな毎日の日課のようにのいちゃんに声をかけられているらしい。生徒会は成績や人柄で選ばれるらしいけど、確かに美形揃いなのは間違いない。 「まぁでも、レイラはT.KRNの専属モデルみたいなもんだからな」 「専属モデルってか、お手伝いみたいなもんだけどねー」 「え！？T.KRNってあのT.KRN！？」 先程までケイにちょっかいをかけていたまみちゃんが急に食いついてきた。"T.KRN"とは俺の母親、カレンちゃんのブランド名だ。小さい頃からよく俺達兄弟はモデルとして新作の撮影に連れ回されていた。といっても、いつも俺達は顎下のカットや、サングラスで顔を隠しているので顔は知られていないけど。その事を話すと、更にまみちゃんは興奮したようで、 「え、T.KRNって言ったら今かなり人気のブランドだよ！？新作なんて店頭並ぶ前のネット販売で売り切れちゃうこともあるし、限定版なんて幻になっちゃうレベルじゃん！！そのデザイナーがレイラ君のお母様だなんて･･･！！」 「ちなみに俺が今着ているのはカレンちゃんが俺のためにデザインした世界に１着しかないTシャツです」 そう言い制服の下に着ているTシャツを見せてみた。すると興奮し過ぎて血管が切れちゃうんじゃないかってくらいの勢いで、飛びついてきた。面白い。 「貴一の実家は色んなブランドを取り扱う大手アパレルなんだよ。で、貴一も見ての通り根っからの洋服好きでね」 向かいに座っている響ちゃんが教えてくれた。関係無いけど響ちゃん、コーラとか飲むんだね。勝手なイメージで紅茶しか飲まないと思ってたよ。