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これが俺のお兄ちゃん
ゴールデンウィークの一日目は久々に揃った親戚で夜中まで宴会状態だった。普段仕事の忙しい大人達も、今回はフルで休みを楽しむためにスケジュールを調整したらしく、昨日の盛り上がり具合は凄かった。
「騎麻、嵐ちゃん着いたって!俺門まで迎えに行ってくるねー」
よろしく〜という声を後ろに聞きながら玄関を出る。今日は嵐ちゃんが常磐の本家に遊びに来る約束をしていた。到着したという連絡を受けて門に迎えにいくと、そこには昨日ぶりの嵐ちゃんが立っていた。
「やっほー嵐ちゃん」
「あぁ。相変わらず常磐の本家はデカイな」
初等部から騎麻と仲の良い嵐ちゃんは何度かここにも遊びに来たことがあるらしい。さっきは一人で歩いた道のりを次は二人で戻っていく。
「今ってお前の家族も居るんだろ?」
「そ!昨日は宴会で大変だったよ〜」
酔っ払い達に玩具にされ、遊ばれた昨晩を思い出す。何故か宴会となると大人達のターゲットにされる事が多いので、毎回逃げ回るのが大変だ。
「嵐ちゃんって兄弟いるー?」
「6歳上の兄貴がいる」
へぇー、嵐ちゃんにもお兄ちゃんが居るのか。学園ではみんなの兄貴的存在が家では弟だと思うと少し不思議な気持ちになる。
「レイラは兄貴が二人だろ?」
「そう!カエラとサハラっていって、二人も今TOKIWAの経営する他の高校に通ってるんだよ〜」
そう、実はお兄ちゃん二人も俺と同じ時期に学校に通い始めたのだ。今しか経験出来ないんだからお前らも折角なら行ってこい!そう言って俺達は送り出された。あえて違う学校なのはそれぞれに違った経験をさせたいからだとか。確かにみんな同じだと一緒に過ごしちゃうだろうからね、少し寂しいけど。
「へぇー、お前んとこ三人年子なのか」
「え、違うよー?あっ!」
丁度本家が目の前に見えてきた所で、先程日課のジョギングに出掛けて行ったカエラ達の姿を発見。同じタイミングで戻ってきたみたいだ。
「あれがカエラとサハラだよ!」
「え、おいあれって・・・」
何かを言いかけた嵐ちゃんだけど、俺の声を聞いた二人がこちらにやってきた。朝からジョギングをするなんて、朝の弱い俺には絶対出来ないなー。
「レイラ、そちらが言ってた嵐ちゃん?」
「はじめまして嵐ちゃん、俺は常磐カエラで、」
「俺が常磐サハラです」
「「よろしくね」」
そう自己紹介をするのは長男のカエラと次男のサハラ。俺と同じ白肌に白に近い金髪、アメジストの瞳。そしてーーー、
「同じ、顔?」
「そ!俺達三つ子なんだよ!」
言ってなかったっけ?そう笑うと今まで見たことが無いほど驚いた顔の嵐ちゃんが頷く。
「あははっ」
「悪戯成功だねレイラ」
「言ってなかったのか?」
相当驚いたのかまだ唖然としている嵐ちゃんをよそに、三人で笑い合う。昔からよく俺達はこうして人を驚かせたり、お互いに入れ替わったりして悪戯をしていた。三つ子が珍しい事もあるが、俺達の様な見た目の、白い髪や紫の瞳は珍しいので、それが同じ顔で三人も居ることが驚きを倍増させるようだ。
「はははっ嵐にもやったのあの悪戯!」
家に入り先程の様子を聞いた騎麻にまで笑われ、少し気まづそうな嵐ちゃんを連れて、普段俺達が本家に居る時に過ごす大広間を使ったリビングに行く。
「よお嵐太郎、久しぶり」
「お久しぶりです亜津弥さん」
騎麻のパパで十六弥くんの弟の亜津弥くん。何度か遊びに来たことがある嵐ちゃんとは顔見知りみたい。亜津弥くんはTOKIWAグループを十六弥くんと一緒に支えている一人で、主に日本を中心にアジア圏を担当している。
「亜津、そいつがレイラ達の言ってた嵐太郎か?」
亜津弥くんの後ろからのぞき込むように声をかけてきたのは、TOKIWAグループの現社長であり、ヨーロッパを拠点に仕事をしている十六弥くん、俺のパパだ。普段は大企業をまとめるキレッキレの十六弥くんだけど、今は完全オフモード。日曜日のお父さんスタイルだ。
「結城嵐太郎と言います。今日はお世話になります」
「常磐十六弥だ。レイラが世話になってるらしいな。ま、今日は気兼ねなくゆっくりしてけよ」
十六弥くんは歩くだけで近くにいる人間を孕ませるとまで言われた、嵐ちゃん以上の色気垂れ流し系色男だ。それに加え中身は破天荒で行動力に優れ、突拍子もない事をどんどん成し遂げる。そんな十六弥くんは家では家族思いで、俺の自慢の父親だ。十六弥くんだけじゃなく、亜津弥くんも、その妹の玲弥ちゃんも、忙しい仕事の中でも最優先は家族という、大企業の社長としては珍しいタイプの人間だと思う。
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