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(嵐太郎視点)

ゴールデンウィーク二日目の今日は常磐の本家に行くことになっている。何度か騎麻に誘われ行ったことのある常磐家だが、今回はレイラに誘われての訪問だ。 久々に訪れたそこは相変わらずスケールが桁違いで、俺の家も企業としては名の知れているがレベルの違いを感じる。迎えに来たレイラと共に本家へと向かう道のりは一つの街のようで、何度来てもここが家の敷地内だということに驚きだ。 そして何より本家を目前に現れたレイラの兄二人には驚き過ぎて言葉も出なかった。 「俺達三つ子なんだよ!」 確かにそこには髪型こそ違うがレイラと瓜二つ、いや三つの顔が並んでいた。しかしその後も観察をしていてわかったが、この三つ子、似ているが似ていない。 長男のカエラは活発で悪戯好きな雰囲気が強く、それでも三人が一緒にいると、何故かこいつが長男なんだなと思える兄の顔をしている。 次男のサハラは一番落ち着いていて、三人のまとめ役といった感じだ。動作もおっとりしていて穏やかである。 で、三男のレイラだが、やはり一番の甘え上手で三人の中だとかなりのマイペースなことがわかる。 「やっぱ知り合いだとすぐに見分けられるんだよなー」 「だから騙せるのは初対面の人か最初の一回だけなんだよね」 「今は髪型も違うし尚更だよね」 そう話す三人の姿を比べるが醸し出す雰囲気のせいか、先程はそっくりだと驚いた顔も今では別々の個人として見分けられるから不思議だ。 「嵐はさ、タイプの顔がいきなり三人に増えてどう思った?」 ふいに近づいてきた騎麻に周りには聞こえない声で質問される。俺がレイラに惚れていることを知っているため、カエラ達を見た反応が気になるようだ。 「最初は驚いたが、あいつらよく見ると顔も中身も全然別人だな。あいつが顔も中身も断トツで可愛い」 そう、初めてレイラを見た時にはこんなにもタイプな奴は初めてだと思う程に驚き、性格を知ればもう自分のものにしたくて仕方ない程にはレイラを欲していた。それなのに似た顔で性格も似た雰囲気を持つ二人には、全くそのような感情は生まれない。俺の答えを聞き、はははっと笑う騎麻の顔は何処か嬉しそうだ。 「嵐ならそう言うと思った。最初はさ、余りにも会ってすぐのレイラの事を気に入ったとか言うから、顔だけに惚れたのかとも思ったんだけどさ、嵐はきっとレイラがあの顔じゃなくても惚れてたね」 そうかもしれない。好きなタイプと付き合うタイプや結婚するタイプが違うなんて事は、世の中ざらにある。それはいくら自分が好みだと思っていても、それが実際に自分と合う相手なのかは違うからなのだろう。 どんなにレイラの見た目がタイプでも中身がレイラでないなら、きっと惚れてはいない。そしてレイラがレイラであるなら、どんな見た目でも俺はきっと惹かれてしまうのだろう。 その事に気付いてしまうと、更にどうしようもない程にレイラを自分のものにしたくてたまらない気持ちになった。 「・・・早く俺のものにしなきゃなんねぇな」 「頑張って」 さて、どうやってあいつに俺の気持ちを分からせようか。 (嵐太郎視点終了)

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