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長風呂には注意

結局その後はカラオケに行き三時間程歌って解散した。ジャズとかクラシックとかを聴いていそうな響ちゃんが、意外と流行りのJPOPを歌っていたり、騎麻が悪戯で入れた懐かしのアニソンを嵐ちゃんが低音のイケボで歌ったりと予想外に盛り上がった。海外にいる間も日本の曲など聴いていて良かった。YouTube様様だ。 そんなこんなであっという間にゴールデンウィークの五日間は過ぎて、先程また本家から一時間半かけて学園に戻ってきた。 四日ぶりの寮の自室はなんだか懐かしく感じて、いつの間にか俺が学園に馴染んでいた事を知る。 「ただーいまー」 といってもまだ嵐ちゃんは帰ってきていないので返事は帰ってこない。ゴールデンウィーク中は家に帰ると何人ものおかえりの声が帰ってきていたので、ちょっと寂しい。 嵐ちゃんいつ戻ってくるのかなー・・。ソファに転がりiPhoneを開いてみるが、特に連絡は無いのでまだ暫くは帰ってこないのだろう。 (風呂でも入ろっかな) まだ時間的には早いけど、移動で固まった体を解すためにもお湯を溜めよう。そうと決まればと早速動き出す。体を洗っている間にお湯は溜まるだろうと、スイッチを入れ服を全部脱いで風呂場に行く。 体と頭を洗い終わる頃には大分お湯も溜まっていて、さっとお湯で体についた泡を流し湯船に浸かる。 「あちっ」 少し熱めに入れたお湯に体にぎゅっと力が入る。慎重に身体を沈めどうにか肩まで浸かる頃には熱さにも慣れ、全身の力が抜けていく。 「〜♪♩♬〜♪〜♪♩♬〜」 先日のカラオケのせいか空前のアニソンブームが俺の中で起こっている。上機嫌で鼻歌を歌いながら壁に水蒸気で某アニメの青い猫型ロボットを描く。若干本物よりスリムだがなかなかの出来に満足。 そのままゆっくり湯船に浸かること約30分。 俺は見事に逆上せた。 普段シャワー派のくせに30分は長すぎた様で頭がくらくらして全身が熱い。どうにか共同スペースへ移動したが力尽きてソファに倒れ込む。よく目が回ると言うが、冗談じゃなく視界がグラグラと揺れている。 「・・・ぃら、レイラっ」 「ん・・・」 目を開くと目の前には嵐ちゃんの顔があった。いつの間にか気を失っていたようだ。ズキズキと痛む頭に手をやるとそこにはひんやりと冷たいタオルが乗っている。 「お前なぁ、また床びしょびしょにしてるかと思えば何全裸でぶっ倒れてるんだよ」 風呂場から移動することに精一杯で体を拭く余裕など全くなかった。時計を見るとそんなに長く気を失っていた訳ではないようで、まだ体には多少の熱が残っている。 「とりあえずこれ飲んでおけよ」 「ん、ありがとう」 嵐ちゃんが渡してくれたミネラルウォーターをごくごく飲むと、その冷たさに幾らか気分が回復する。その間に嵐ちゃんがタオルを持ってきてくれまだ水分の滴る髪を拭いてくれる。何から何まですみません。 「ったく、お前は一人で風呂もまともに入れないのかよ」 「ごめん・・・」 返す言葉も無くて落ち込む。大分気分も落ち着いてきたが、寝ていろという言葉のままにソファに横になる。そうしている間も濡れた床を拭いたり、冷たいタオルを用意してくれたりする嵐ちゃん。帰ってきて早々後始末をさせてしまった。 普段から色んな人に世話をかけている自覚はあるけど、流石に今回のは情けない。嵐ちゃんも呆れてしまっただろうか。もしかすると俺の事を面倒臭いと思ってしまったかも。そうなるとショックで立ち直れない・・・。

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