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仲間はずれはよくない

「ん?レイラどうした」 抱き着いたまま静かな俺に気付いた嵐ちゃんが、柔らかく髪を撫でながら聞いてくる。なんかこの状況、 「俺だけ仲間外れみたいじゃん・・・」 さっきまで静かに観察するように俺の事を見てたのに、本当はみんな仲良しで今は楽しそうに盛り上がっている。状況を知らなかった俺だけが、何だか蚊帳の外状態だ。 俺の言葉を聞き周りの男達が慌て出す。そんなつもりは、とか常磐さんを驚かそうと思って、など口々に謝ってくる。俺は別に怒っている訳では無いのだけど。 「悪い!俺達はそんなつもりなくて、むしろ嵐太郎と常磐さんの事を嬉しく思っていて、」 「レイラ」 「え?」 「常磐さんじゃなくてレイラ」 慌てて声をかけてきた晃太くんの言葉を遮り伝える。先程の楽しそうに嵐ちゃんに声をかけているみんなの姿を見れば、俺の事を歓迎してくれているのは十分わかった。なので、俺の事を常磐さんじゃなくて、レイラって呼んでくれるなら良いと伝える。 「呼ぶ呼ぶ!」 「騙してごめんねレイラ!」 「レイラ怒らないで!」 すぐに呼び方を変えて声をかけてくれるみんなにやっと笑顔になる。やっぱり常磐さんなんて距離のある呼び方より名前が良い。 「嵐太郎、なにあの子、可愛すぎるだろ」 「だろ。絶対やらねぇからな」 その後、話をしていて知ったが嵐ちゃんのファンクラブのメンバーの大半は、このトレーニングルームで一緒にトレーニングをするトレーニング仲間らしい。鍛えられた肉体に憧れ、一緒にトレーニングしている間に嵐ちゃんの事を兄貴と慕うようになり、ファンクラブに入るという流れでどんどん男臭い集団になってしまったんだとか。 「にしても、まさか晃太が負けるとは思わなかったよな!」 俺が腕相撲で勝負と言った時、ここに居る全員が俺が負けると思ったらしい。いやいや全員て、流石に酷いと思う。 「まぁ腕相撲ってちょっとコツがあるよね」 実は俺は先程の勝負でアームレスリングの大会などでは一番メジャーとも言える、トップロールというテクニックを使った。相手が100%の力を出しずらい姿勢を取り、勢いで押し込んだのだ。 常磐家の宴会では男が多い事もあり、よく腕相撲大会やプロレス大会のように力比べが始まる。子供に態と負けてやるなんてことは、一切しない十六弥くんと亜津弥くんに、どうにか勝とうと俺達はよく色んな方法を試しているのだ。それでも未だ負け知らずの十六弥くんは最強すぎて、同時に大人気ない。 今度一緒にトレーニングをする約束をしてから晃太くん達とは分かれ、嵐ちゃんと寮の自室へと帰る。途中に寮のコンビニで買ったご飯で軽く早めの夕食を済ませ、昨日風呂で逆上せて倒れた俺を心配して一緒に入ると言う嵐ちゃんを、どうにか言いくるめて一人づつシャワーを浴びた。 「レイラ、わかってるな?」 「うん、お手柔らかにお願いします?」 実は昨日の夜約束をしていた。 「明日、俺はお前を抱く」 何で今日じゃなくて明日なのか。それは俺に心の準備をさせるためと、付き合って初日に手を出すのは体目当てのようだから、という謎の嵐ちゃんのポリシーによるもの。付き合う前から手を出していた気がするのは、俺の気のせいなのだろうか。 嵐ちゃん曰くあの時は入れてないのでセーフなんだとか。ちょっとその基準は俺にはよくわからないけど、一応嵐ちゃんの中では線引きがされているらしい。 という事で、今夜俺常磐レイラ16歳は、結城嵐太郎にバックヴァージンを奪われます。

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