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家族が増えました
「見て見て嵐ちゃん!!ちょー可愛い!こっち見てる!!」
暑さから逃げるように入った大型のショピングモール。入ってすぐに見つけたペットショップにて俺は運命の出会いをしてしまった。
様々な種類の子犬や子猫がガラスの向こうで、寝たり玩具で遊んだりと各々の時間を過ごす中、こちらをじっと見つめる一匹。
ガラスに近づきしゃがみ込んで目線を合わせてみると、こちらを見ていたつぶらな瞳が尻尾を振りながらガラスに飛びかかる。
「嵐ちゃん!!」
「ああはいはい、可愛いな」
嵐ちゃんの反応が薄くて少し不服だけど、もう俺はこいつから目を離すことが出来ない。なんでそんなに一生懸命尻尾振ってるの?何がそんなに嬉しいの?ああもう可愛いすぎて禿げそう。
「良かったら触ってみますか?」
俺と嵐ちゃんのやり取りを見ていたらしい店員が声を掛けてきた。もちろんお願いします!!
「そちらはクリームのミニチュアダックスフントの男の子ですね。とても人懐っこい性格をした子です」
店員さんが説明してくれるが俺の注意は完全に腕の中の子犬にしか向いていなかった。俺の腕に抱かれた状態で先程よりも更に豪快に尻尾を振り、俺の顔をしきりに舐めてくる。
「嵐ちゃん!!!」
「はいはい可愛いな良かったな」
子犬を片手で抱いた状態でポケットからiPhoneを取り出す。そしてある名前を探し出しタップすると、数回のコール音の後に目的の人物の声が聞こえてきた。
「和臣おじさん、小型犬なら飼ってもいいって!!」
そう、俺が電話をしたのは理事長である天羽和臣おじさんだ。電話で可愛い子を見つけてしまった、どうしても連れて帰りたいと伝えると、ちゃんと面倒を見るなら飼っても良いと許可をくれたのだ。
「嵐ちゃん、いーい?」
「ダメって言っても聞かないだろ」
その通り。もう俺はこいつを連れて帰る気満々だ。それが分かっていた嵐ちゃんは、仕方ないなというように俺と腕の中の子犬の頭をぐしゃぐしゃっと順番に撫でると、店員に声を掛ける。
「こいつと、世話に必要なもの一式下さい」
嵐ちゃんの言葉を聞き、俺のテンションはもう最上級に上がっている。俺の気持ちが、伝わっているのか腕の中の子犬も嬉しそうに尻尾を振っていた。
「じゃあ、買い物を終えたらまた迎えに来るんで」
「いい子にしててねー!」
子犬と買った犬用品を預け、本来の目的だった買い物をしに行く。俺的にはもう満足してしまっているが、せっかく街まで降りてきたので色々見て行こうと思う。
「流石に最初に入った店でいきなり犬買うとは思わなかったわ」
「あははっ俺も思ってなかった〜」
館内案内図を頼りに3階のインテリアショップに辿り着く。取り扱ってる商品もお手頃価格から高額な物まで幅広く、店舗もなかなかの広さがある。
何を買うかは特に決めていないので、端から順に目に付いたものを見ていくことにした。
「このカーペット良いな、サイズあるか?」
「えっとー・・・、あ、あるよ!」
「よし買うか」
「こっちのクッションも欲しい!」
「そうだな、とりあえず四つあればいいか」
あれも、これもと気に入ったものをどんどんカートに乗せてゆく。好きな系統が決まっているので特に迷うことはなく、あっという間にカートはいっぱいになった。
「計19点で212,112円になります」
カードで支払いを済ませ流石に持ち運べる量ではないので寮に配送してもらうことにした。
ちなみにこのカード、よく驚かれるけどデビットカードなので銀行の残高分しか使うことが出来ない。TOKIWAの御曹司だからってブラックカードで金使いまくり!とかしないよ?小さな頃からモデルや十六弥くんの仕事の手伝いをして貰った給料があるから、うちはお小遣い制でもない。まあお金に困ったこともないんだけど。
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