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球技大会

寝る前の予定通り、日曜日は起きてからずっとティノに構っていた。昨日は邪魔をしてきた嵐ちゃんも、今日はティノと遊ぶ俺を眺めていたり、一緒に遊んだりと大人しい。 一日一緒に遊んでみてわかったのが、ティノはとても頭が良い。昨日来たばかりだと言うのに、しっかりとトイレの位置も覚えているし、無駄吠えもしない。まだ少し覚束無い足取りで遊ぶ時は部屋の中を駆け回っているけど、疲れて眠る時は大人しくゲージへと戻って行く。 「明日から学校に行ってる間は玄さんが面倒みてくれるって!」 賢いとはいえまだ子犬のティノを部屋に長時間一匹で居させるのは心配なので、先程玄さんに相談してみた。すると、備品の管理や手入れの時間以外は管理人室で過ごしていて話し相手もいないので、ティノの面倒を見させてほしいと申し出てくれた。本当は仕事でそこまで暇もないはずなのに、優しい玄さんの申し出に素直に甘えることにする。 「それなら安心だな」 「うん!玄さん優しいからティノもすぐに懐くよ」 自分の事を話しているのが分かっているのかこちらを見つめて尻尾を振る姿が可愛い。 「明日は玄さんといい子にお留守番しててね~、俺は嵐ちゃんボッコボコにしてくるから」 「・・・言ったな?」 明日は球技大会。クラス優勝はもちろん、バスケでも優勝を目指しているので、必然的に明日は嵐ちゃんは敵だ。容赦なく全力で叩き潰そうと思う。 「じゃあ、後で応援行くから!お互い頑張ってこー!!」 グラウンドで試合のある凌がサッカーに出るクラスメイトと共に外へと走っていく。数日前まで続いた雨で水たまりだらけだったグラウンドも、土日ですっかり乾き、綺麗に整備されている。 「じゃ、俺達も行きますか!」 1回戦は10分後、対戦相手は1-Cだ。 「決勝戦までは出来るだけレイラの体力を温存させる」 「レイちゃんは走らず、パスしたボールをひたすらシュートしちゃって!」 「了解!」 決勝戦まで勝ち残る前提ではあるけど、俺は対2-S用の最終兵器なので予選は手を抜かさせて貰う。スポーツ特待のEクラスも強敵ではあるけど、Eクラスは所属している部活の種目には出場出来ないので、その点では他クラスの方が有利だ。 「では予選一回戦を始めます!」 一番背の高いゆっきーがジャンプボールのポジションにつく。笛が鳴ると同時に高く上げられたボールに、先に手が届いたのはゆっきーだった。弾かれたボールをみっちゃんがキャッチし、そのままゴールへと走っていく。相手チームが止めにかかるのを上手く交わし、ゴール下に先回りしていた大ちゃんにパスをし、そのままシュートする。綺麗にリングへと吸い込まれたボールに周りで応援していたクラスメイトからの歓声が上がった。相手のボールで再開されるが、相手のパスを要が上手くカットすると同時にゆっきーへとボールを回す。走り出したゆっきーは相手を次々に交わしていき、そのままレイアップでボールをリングに収める。 練習の時点で分かっていたけど、うちのチームはかなり強い。経験者の三人もかなりの実力だけど、要も元々の運動神経の良さで負けていない。多分運動神経だけなら、みんなEクラスにも負けていないんじゃないかな。 四人の活躍で開始早々に4点を先取した。けど実はここまでの流れで、俺はスタートした時の位置から殆ど動いていない。しかし体力温存のためとは言え動かないのも退屈。そう思っていると丁度よく要からのパスが飛んでき、キャッチすると同時にゴールに向かって投げる。ハーフラインよりも遠くにいた為、叩きつける様に片手で強く投げたボールだが、ゴールのボードに当たりリングを通って落ちる。 今まで動かなかった俺の突然のゴールに選手も観客も一瞬静まり、その後今までで一番大きな歓声が上がる。 「なんだ今のっ」 「流石にまぐれだろ!?」 「レイラ君かっこいいー!!」 様々な歓声に気分も上がってくる。こんだけみんなが注目してくれるなら、大人しくなんてしていられないな。 俺は目立つのが大好きなんだよ!

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