57 / 311

2

1回戦は45-12で圧勝だった。 「何お前普通に動き回ってんだよ」 「楽しくなっちゃって!」 試合が終わると同時に要に突っ込まれた通り、最初の作戦など関係無く、普通にバスケを楽しんでしまった。 「まあまあ、決勝戦の体力さえ残っててくれたら問題ないし!」 「レイラのプレー見てると俺らも上がってくるからな」 そうみっちゃん達がフォローを入れてくれる。そうそう、まだこの後も試合は続くので途中途中で休憩を挟めば問題無いだろう。俺だって楽しみたいんだ。 「要だっていっぱいパス回してくれたくせに」 「そりゃあんだけアピールされたら目につくだろ」 何処からでもシュートを決めれる俺は至る所からパスを要求する。それにつられて要が高確率でパスを回してくれるので、一応走り回るのは最小限に抑えられた。 「次の試合までちょっと時間あるしグラウンドの方行ってみようよ!」 グラウンドに出てすぐの場所で行われているサッカーの試合へと足を伸ばす。タイミング良く俺達のクラスが試合をしており、クラスメイトを見つけ一緒に応援をする。 3-1で1-Sが勝利し、グラウンドが盛り上がる。 「あ、要!レイラ君!勝ったー!!」 「俺達もバスケ一回戦勝ったよ!」 試合を終えた凌とハイタッチ。普段の奇声を上げたり鼻息の荒い姿とは違い、サッカーをする凌はかっこよかった。 「凌、いつもサッカーしてればいいのに」 「同感だわ」 「あれ!?何だか褒めてる顔じゃないよ!?」 まだ少し時間があるので他の種目の様子を見ながら体育館へ戻ることにした。グラウンド横にあるテニスコートでは六つの試合が同時に行われており、そのうちの一つのコートの周りに人が集中しているようだ。 「あ、響ちゃんが試合してる!」 「よく見えるな」 人集りでしっかりは見えないけど人の隙間からラケットを持った響ちゃんが見えた。まだ予選なのにこのギャラリーの多さ、決勝まで勝ち進んだ場合どうなるんだろう。 「そろそろ俺らも次の試合行くぞ」 「はーい」 次の相手だった2-Bは初戦での俺の動きを見ていたようで、初っ端から俺にマークが二人もついた。しかもどさくさに紛れて無駄に接触してくるので、気持ち悪い。 「大丈夫か?」 「ちょっとキツいかも」 前半が終わり2分間の休憩を挟む。マークされている俺は満足に動けず、度々されるセクハラに精神的にも疲労が溜まる。審判やギャラリーからは俺を抑えているだけに見えるかもしれないけど、俺にはお尻や足を故意に触っているのが丸分かりだ。 俺にマークを二人も付けているので、試合的にはこちらのチームが優勢を保っている。しかし、俺的にはこのままやられっぱなしで勝つだけでは気が晴れない。 「ちょっとお願いがあるんだけどー・・・」 休憩が終わりコートに戻る。先程と同じ二人が俺へとマークに入る。そのニヤニヤした顔を今すぐ叩き潰してやりたい。 スタートの笛と同時に両チームが走り出すが、やはり俺は前後からかなり密着気味に抑えられ動けない。ゴール下で繰り広げられるプレイにハーフラインすら遠く感じる対角の位置で足止めを食らう。みんなの意識が反対側に向いているのをいい事に、一人が俺へと手を伸ばそうとした、その時ー。 シュッッバシッ 「ひッ」 一直線にボールが俺へと手を伸ばした男の顔の真横スレスレを通って飛んできた。 急に飛んできたボールに怯んだ隙に俺はキャッチしたボールを大きく振りかぶりゴールへと投げる。飛んできた時と同じ位の猛スピードでボールがまた顔のスレスレを通り、ガゴンッ!と大きな音を響かせリングを揺らしながらシュートが決まる。 「集中してないと、次は当たるかもよ?」 俺を囲んでいた二人のニヤついた顔が青ざめるのを見て、口角がグッと引き上がるのを抑えることが出来ない。

ともだちにシェアしよう!