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言葉の通り俺を抜かせまいとしつこくマークされる。スピードでは負けないが上手く騎麻と連携してボールを取らせてくれない。 「あぁもぅやだ!ちょーしつこい!!」 「俺達へのマークも強いし」 「全体のレベルが予選と全然違うな・・・」 何とか点差は守っているが全く気持ち良く点を決めさせてくれない。どちらかと言うと俺達は攻めのバスケだが、相手は守りのバスケで相性が悪いのだ。 「レイラ最後まで体力持つか?」 みっちゃんが心配そうに聞いてくるが、実は前半からかなり走り回ったため既に大分キツい。汗も止まらないし、息切れもする。ぶっちゃけ2分間の休憩なんかじゃ全く回復なんかしない! 「いや、むしろ俺が倒れたら騎麻も嵐ちゃんも心配して動きが鈍くなるかも・・・?」 「そこまで体を張らなくていい!!」 まあそれは冗談だけど、流石に後半は走りっぱなしというのは無理だ。 あっという間に休憩が終わり後半が始まる。俺をフォローするようにみんなが前半以上に走り回り健闘するが、点差が徐々に近づいていき残り時間あと僅かという所でとうとう同点に追いつかれた。 「くそっ、まずいな」 チームメイトの焦る声とは逆に盛り上がる相手チーム。時間は残り7秒。もう、やるしかない。 ボールが投げ込まれると同時に全力疾走でみっちゃんが走り込む。止めに入る相手の姿が視界に入るが姿勢を下げてギリギリで交わし、どうにかボールをキャッチする。そのままドリブルでゴールに近づくが残り時間は3秒。間に合わない。そう判断したのか逆サイドのみっちゃんからボールが勢い良く飛んできた。すぐ後ろには嵐ちゃんが構えているが、時間がない。 飛んできたボールを掴むのでは無く、突きの勢いで思い切り弾き返す。勢い良く弾き出されたボールはどうにかゴールに届くが、流石にコントロールが僅かにズレた。 弾かれる!そう思った瞬間ゴール下から伸びてきた手にボールがリングの中へと押し込まれた。 ピピーーッ 「試合終了!37-39、1-Sの勝利!!!」 最後の最後でゴール下にどうにか追いついたゆっきーが、弾かれたボールをリングへと押し込み1ゴール差で1-Sが勝つことが出来た。 「ゆっきー!!!」 「ごめんね、いいとこ貰っちゃって!」 そう言うゆっきーにみんなで飛びかかる。体育館はこのギリギリの接戦に大盛り上がりで歓声が鳴り止まない。 「かっこよかったよゆっきー!!」 「わっレイちゃんから抱き着いてくれるとか俺頑張って良かったー!」 優勝の嬉しさにゆっきーに飛びつくと、俺を持ち上げたままゆっきーがぐるぐると回る。周りにも応援していたクラスメイトが集まってきて大騒ぎだ。 「くっそー、負けちゃったな嵐」 「あぁ、惜しかったな」 「ところでレイラが他の男に思いっきり抱き着いてるけど良いのか?」 「ま、楽しそうだしあんくらいはいいだろ」 そんな会話がされているとは知らずに、俺達は優勝の喜びに浮かれていた。審判をしていた体育委員に怒られるまで騒ぎ続け、やっと整列し終了の挨拶をするのと、アドレナリンの切れた俺がぶっ倒れるのはほぼ同時だった。

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