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夏休み突入!
「日焼け止めの予備も用意しとけよー?」
「大丈夫!予備もボトルで入れたから」
期末テストの結果は赤点もなく無事に夏休みを迎えることが出来た。初日には常磐の本家へと戻り騎麻や真斗と出かけたり家のプールで泳いだりと、既に夏休みを満喫中。
そして今は明日からの別荘への準備中なんだけど、やりたい事が多すぎてなかなか荷物が纏まらない。いざって時は向こうで揃えれるので足りない物があってもまあ大丈夫なんだけど、備えあれば憂いなしってやつだ。
「真斗は本当にお兄ちゃん達と別荘行かない?」
「友達と約束あるからいいってば」
もう何度めかもわからないやり取りが後ろから聞こえる。兄弟大好きの騎麻は普段なかなか会えない真斗に構いたくて仕方ないらしい。ま、いつも通りだけど。
「真斗〜、ティノの面倒もよろしくね〜」
「あぁ、ティノはいい子だし問題ないだろ」
寮から一緒に連れ帰ったティノだけど、流石に別荘まで連れていく訳にはいかないので、常に人のいる本家でお留守番だ。既にこの数日で本家の人間に可愛がられて懐いているので、真斗の言う通り問題はないと思うのだけど・・・
「三日も離れるの初めてだから、帰ってきてティノが俺の事忘れてたらどうしよう!?」
「忘れねぇから安心して楽しんできなよ」
「最近ちょっと反抗期だけど真斗も優しいし動物好きだもんね・・・、でも、帰ってきて俺より真斗に懐いてたら、俺、俺・・・!!」
「いいからさっさと荷造りしろってば」
半分は冗談だけど半分は本気なのに真斗ったらノリが悪いぞっ。仕方ないから大人しく荷造りを再開。
「おっはよー!」
午前9時に待ち合わせの駅へと向かうと、みんなは既に揃っていた。何だか周りにちょっとした人集りが出来ていて、道路からでもどこにいるのか丸わかりだ。みんなで乗れる大きなキャンピングカーのドアを開け中に招き入れる。
「おはようレイラ君、騎麻」
「へぇーっ俺キャンピングカーって初めて!」
「お邪魔しま〜す」
「荷物は適当に置いてねー」
続々と入ってくる面々。みんな学園で見るよりも大分ラフな格好をしていて、今から夏休み!って感じがすごく良い。
「ここから大体一時間くらいで着くから、適当に寛いでてよ。あっちに冷蔵庫とか食べ物もあるから」
冷蔵庫から出したばかりの冷たいドリンクを片手に騎麻がみんなへ声をかけるのを横目に、隅にいる要と凌に近づく。何だかちょっと既に疲れて見えるのは暑さのせいかな?
「なんか学園で見慣れてたって訳じゃないけど、やっぱ先輩達イケメンすぎだよね・・・」
「駅に着いた一瞬で周りに人の壁が出来たな・・・」
どうやら集合場所で学園の生徒の様に響ちゃん達のイケメンオーラに見慣れていない、一般の人達に囲まれ大変だった様子。
「二人もイケメンなのに慣れてないんだね」
このメンバーの中にいると少し霞んでしまうけど、要も凌もなかなか整った顔をしている。少し強面の要もちょっと悪い感じがワイルドだし、黙っていれば凌だって爽やかサッカー少年だ。
「このメンバーの中にいたら俺達なんかその辺に転がってる石ころみたいなもんだよ!」
そこまで言わなくてもいいと思うんだけど、凌の顔は真剣なので黙っておく。疲れた様子の二人には特別に俺のお気に入りのふかふかのソファを譲ってあげ、車内を見渡し目当ての人物を探す。
「何キョロキョロしてんだよ」
「嵐ちゃん!」
探していた嵐ちゃんはキッチンにいたようで手にはドリンクを持っている。アイスブルーの緩めのデニムに白いTシャツでラフな姿は、シンプルだけどスタイルの良さでとてもきまっている。
「何飲んでんの?」
「飲むか?」
そう言って近づけられたコップに口を寄せ一口。
「レモネード!」
「冷蔵庫に入ってたぜ」
ほんのりと甘酸っぱい味が口に広がる。それは俺の大好きな味で、多分お手伝いさんが出発前に作って冷蔵庫に入れてくれていたのだろう。嵐ちゃんがコップを渡してくれたのでもう一口。やっぱ夏といえば冷たいレモネードだなぁ。手の開いた嵐ちゃんがいつものように俺の頭を大きな手で撫でる。
「え、結城のあんな柔らかい笑顔初めて見た」
「嵐はレイラ相手だと大体あんな感じだぜ?」
「まぢか〜」
少し離れた所で談笑する生徒会と風紀のトップ1.2。何を話してるかは分からないけど、心配してた割には普通に溶け込んでいる安ちゃんに安心する。
「お前何か塗ってるのか?」
首筋に顔を寄せた嵐ちゃんがいつもと違う香りに気づいたようでくんくんと匂いを嗅ぐ。その動作がちょっとティノのようで、少し擽ったい。
「日焼け止めだよ。しかもTOKIWAの研究所オリジナルの強力なやつ」
前に日焼け止めを塗り忘れて外に遊びに出た俺は、全身真っ赤で火傷状態になった。水膨れになり風呂に入るのも寝るのも辛い状態が四日程続き、その後全身の皮が脱皮するように剥けたのは思い出すのも嫌な記憶だ。
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