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別荘一日目
車に揺られること約二時間。着いたら何をするかなどみんなで喋っているとあっという間だった。
「着いたー!」
「あ、あっちに砂浜が見えるよ!」
車から降り見えた景色にテンションが上がる。その時バタンっと運転席のドアを閉める音がし、振り返るとそこには赤茶色の髪に190を超える長身。長時間の運転で凝った体を解すように動かしている。
「父さん送ってくれてありがとう」
「亜津弥くんありがとう!」
「また帰るとき迎えに来るから、楽しんできな」
そう言い騎麻と俺の頭をポンポンっと順番に軽く撫でるのは、騎麻のパパで十六弥くんの一つ下の弟の亜津弥くん。いつも破天荒に動き回る十六弥くんをサポートしている右腕だ。
「えっ、亜津弥さんが運転して下さってたんですか!?」
「TOKIWAの副社長に運転させてたとか・・・」
亜津弥くんが運転してた事を知ったみんなが顔を青くして焦り出す。しかし亜津弥くんはそんな事を気にするような人ではない。
「休日に息子と友達を連れて海に行くとか、俺理想の父親じゃない?」
「亜津弥くんは良いパパだよねー!」
今日は亜津弥くんはお休み。そんな日は普段会えない子供達のために車くらい運転しちゃうだろ、そう言う亜津弥くんにみんなまだ少し申し訳なさそうだが各々礼を口にする。
普段忙しく働いているためたまの休みくらいゆっくりしたいと思うが、家族の為に働いているのにその家族を放ったらかして休むくらいなら休みなんていらない。亜津弥くんはそんな父親だ。イケメン。
「しっかり楽しんでこいよー」
そう言い帰っていく亜津弥くんをみんなで見送り、荷物を持って別荘の中へと入っていく。海と山に挟まれるように建っているそれは木をメインに使ったログハウス風の家で、ログハウスといっても大家族の常磐家がみんなで寛げるようにかなり大きめの造りだ。
部屋数も十分にある為それぞれ2階の部屋に荷物を置きに行く。この後はとりあえず海に行く事になったので、そのまま部屋で水着に着替えてくることにした。
水着の上から長袖のパーカーを羽織り、足元もビーチサンダルに履き替える。ポケットには財布とiPhone、日焼け止めを入れて準備は完了だ。
1階に戻りみんなが揃うと目の前に見えていた浜辺へと向かう。
日本にしては珍しい程真っ白なビーチに、ピーク時程ではないがそれなりの海水浴客がいた。まずは空いているスペースに別荘から持ってきたテントをたてる。騎麻と嵐ちゃん、このくんと要がテキパキと動きすぐにテントは完成し、その中にドリンクを入れたクーラーボックスと貴重品などを入れる。
「本当お前白いな」
「ほら、日焼け止め塗り直してやるからおいで」
元々白い俺の肌が日の光を浴びて更に白く輝く。今日はなかなかの晴天だ。それを近くで見た嵐ちゃんと騎麻によってテントに戻された俺は全身に日焼け止めを塗りたくられる。
「海まで競走しようぜ」
全身くまなく日焼け止め止めを塗り終え、満足した二人からようやく許可が出た。パーカーをテントに置いたまま外に出ると、テントの前にいた要に声をかけられる。
「いいね。凌は?」
「あいつは後から来るだろ」
見ると一生懸命浮輪に空気を入れる凌と安ちゃんの姿が。ポンプを使ってはいるが、あのサイズを膨らませるのにはもう少しかかりそうだ。
「お昼は負けた方の奢りね!」
別にそんくらいどうってことは無いが、勝負というのは賭け事があった方が盛り上がる。ニヤリとお互いに口角を上げ、同時に海へと走り出す。砂に足を取られて走りづらいが、どんどん海水が間近に近付いてくる。
バッシャーンッッ
「わーい!俺の勝ちー!!」
「くそっ、やっぱ速ぇな」
僅差ではあるが先に海水に飛び込んだ俺の勝ち。少し遅れて飛び込んだ要と共に全身びしょ濡れだ。海水はかなり冷たいが空から降り注ぐ太陽の熱と相まって気持ちが良い。
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