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BBQは奥が深い
「うまっ」
ただ焼いて塩やタレで味付けしただけの、料理ともいわないレベルなのに、何でこんなにも美味しいんだろう。
「BBQ最高」
「右に同じ」
「左にも同じ」
朝から遊んで腹ペコだったから美味しさ倍増。空腹は最高のスパイスとは、誰の言葉かは知らないけど凄く納得する瞬間だ。
「こっちの肉も食べれるぞ」
トングを片手にこのくんが食べごろの肉をどんどん皿へと乗せてくれる。ほとんど俺の専属状態で肉を焼き続けてくれているので、俺もこのくんにべったりだ。
「悠仁、レイラには野菜もちゃんと食べさせて!」
「BBQのメインは肉でしょ!・・・って、嵐ちゃん!俺の肉!!!」
「野菜を食べない奴にやる肉はない」
焼けた野菜をこちらに寄越す騎麻とこのくんから貰った肉を咀嚼する嵐ちゃん。この二人が揃ってしまったら、もう野菜を食べない限り俺の所に肉は来ない。そう察した俺は渋々騎麻の持つ皿の上からかぼちゃと玉ねぎを自分の皿へと移しちびちびと齧る。別に食べれない訳ではない。食べたくないだけで。
「本当にレイラ君は驚くくらい肉食だよね」
響ちゃんが笑顔で近付いてくる。BBQなのに野菜と肉を6:4くらいで食べてる響ちゃんの方が俺からしたら驚きなんだけど。気を取られている間に皿の上に野菜が追加され、折角食べ終わったばかりのかぼちゃが口から出そうになった。
「嵐ちゃん・・・」
「それ食べ終わったら肉やるよ」
俺の目の前で肉を口に入れながらニヤニヤする嵐ちゃんが憎い。にくだけに。全然面白くない。仕方ないので追加されたキャベツをもしゃもしゃと咀嚼する。やっと乗せられた野菜を食べ終わり、騎麻と嵐ちゃんの方へ空になった皿を見せアピールする。さあ、俺に肉をください。
「お、ちゃんと食ってんじゃん」
「いい子のレイラ君には出来たてのこれをあげよう!」
「おぉ!!!」
そう若干芝居じみた喋り方をして騎麻が俺の皿へと乗せたものに思わず歓喜の声を上げてしまう。なんとそこには俺の大好物の一つ、ローストビーフじゃないか!!
「BBQでローストビーフって出来るんだ!!」
「要が作ってくれたんだよ」
「安吾が作ったアヒージョもあるぞ」
もう俺のテンションはMAXだ。BBQといえば肉や海鮮を焼いて食べるだけだと思っていたのに、そんな料理も出来るとは知らなかった!とりあえず皿に乗せてもらったローストビーフを一口。
「うま!!」
「そりゃ良かった」
近くにいた要も満足そうにしている。要への評価が俺の中で急上昇中だ。みんなでローストビーフやアヒージョを美味い美味いと褒めながら食べ、大量にあった食材の殆どが胃の中に収まった頃にはかなり腹は満腹状態だった。
「満腹になったら眠くなってきたかも」
「お前は赤ん坊かよ」
「まあまあ、ちょっと別荘に戻って休憩しようか」
響ちゃんがそう言ってくれたおかげで一旦別荘に戻ることになった。BBQの後片付けをして、纏めた荷物を持って麓の別荘への道のりを歩く。15分ほど歩いてやっと別荘の屋根が見えてきた。
「あれ?あれってうちの車だよね?」
「本当だ、迎えに来るのは明日のはずなのに、おかしいな・・・」
別荘の正面には何故か乗ってきたキャンピングカーが停まっていた。帰るのは明日の予定なのに、何で車があるんだろう。不思議に思いながら別荘へと近付くと、バンっと急に玄関の扉が開いた。音に驚いてそっちを見てみると、
「待ってたぞ餓鬼共ーーー!!!!」
「十六弥さん!?」
「え!?なんでいるの!?」
そこにいたのはグレーのスウェットパンツに黒のタンクトップ姿の十六弥くんだった。え、本当に何でいるの?
「俺達もいるぜー!」
「やっほうレイラ」
そして十六弥くんの後ろからひょこっと顔を出したのは俺の三つ子の兄、カエラとサハラだ。
「レイラ君が三人・・・」
「えっどういうこと!?」
目の前に急に現れた光景にみんな驚いている。そういえば嵐ちゃん以外の人には、いつかドッキリをしようと思って三つ子だと言うことを言っていなかった。予想していたタイミングではないけど、みんな驚いてるからこれはこれで有りかな。そんな事を考えている間に外に出てきた三人、かと思えば別荘の中には亜津弥くんもいた。
「急に悪いな、こいつらがどうしても乗り込むって聞かなくて」
「せっかく急いで仕事片付けて日本に来たのに、家についたらレイラいないじゃん?」
「お兄ちゃん達もレイラと遊びたいし?」
「まあ、だったら乗り込んじゃえ的な?」
状況はまあ分かった。十六弥くん達のやりそうな事だし、俺も逆の立場なら同じ事をする。でも、俺と騎麻以外は突然のこの状況が飲み込めず、みんな唖然と固まってしまっていた。
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