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常磐の常識
「えっと、レイラ君のお父さんとお兄さんで、合っていますか?」
いち早く状況を理解したらしい響ちゃんが十六弥くん達へと話しかける。
「お、自己紹介もせずに悪いな。俺はこいつらの父親の常磐十六弥だ」
「俺は長男の常磐カエラで」
「次男の常磐サハラです」
よろしくーと緩く挨拶する三人にとりあえず緊張気味のみんながぎこちなく挨拶をする。嵐ちゃんは一度会ったことがあるのでそこまで緊張した感じは無いけど、やっぱりいつもよりは少し表情が固い。
「せっかくみんなで遊びに来てたのに悪いな」
何故か亜津弥くんが申し訳無さそうに謝ってきたのを、響ちゃんやこのくんが慌てて止める。
「いえいえ、俺達が別荘をお借りしている側なので」
「むしろ人数が増えて楽しそうですね」
あぁ、二人共本当に優しいなぁ・・・。
とりあえず暑いので一旦中に入り、この後のことを話すことにした。最初は十六弥くんや亜津弥くんに緊張していたみんなも、徐々に慣れたのか普通に会話をしている。
「へぇー!要と凌はレイラと同じクラスなんだね!」
「レイラはしっかりやってる?」
「レイラ君すぐにクラスにも溶け込んで、学園内でもアイドルみたいな感じだよ!」
「まあたまに突拍子もない事やって周りを驚かせてるけどな」
同い年なこともあって要達はすぐにカエラ達と仲良くなった。やっぱり見慣れてる人からすると俺達はあまり似てないらしく簡単にみんな見分けれている。
「そういえば嵐太郎、レイラと付き合い始めたらしいな?」
みんなで談笑している中、十六弥くんが思い出したように嵐ちゃんに向かってそんな事を言う。唐突な問いかけに一瞬でみんなの視線が嵐ちゃんに集まったのがわかる。
「はい、ゴールデンウィーク明けからお付き合いさせて頂いています」
今日一番緊張した様子の嵐ちゃんに、周りにも緊張感が伝わる。学園内では珍しくない事とはいえ、世間一般的に男と付き合っていることをカミングアウトするのは勇気がいることなんだろう。しかもそれを相手の親にとなれば尚更。
「じゃあ嵐太郎も俺の息子か〜」
「じゃあ嵐ちゃん俺のお兄ちゃんじゃん!」
「この場合レイラの相手だから弟じゃないか?」
しかし、そんな緊張した雰囲気など全く気にしないのが常磐家だ。ゴールデンウィークに会った時から予想はしていたんだよなーと、予感的中だわとドヤ顔の十六弥くんと、嵐ちゃんがお兄ちゃんになるのか弟になるのかを話し合うカエラとサハラ。かなり緊張して俺達の関係を言葉にしただろう嵐ちゃんも、周りで心配気に見守っていた響ちゃん達もみんな十六弥くん達の反応にぽかんとしている。
「何お前ら驚いた顔してるんだよ。俺がここで"ふざけんな!"って怒り出すとでも思ったか?」
「っえ、いや、そんなことは、」
みんなの顔を見た十六弥くんがにやにやしながら言うのを焦り気味に返す。まあ、それが世間一般での反応なのかもしれないけど、ここにいる常磐の人間には"世間一般的に"という言葉は通用しない。
「別に一度会っただけだけど、俺は人を見る目はあるんでな。それはこいつらも一緒だし、嵐太郎が碌でもない奴ならレイラは付き合わねぇよ」
「・・・男だと言うことは」
「性別なんか後から付いてくるおまけみたいなもんだろ。お互いが好きならそんなこと問題にもなんねぇな」
何を当たり前のことを言っているんだといったように言い切る十六弥くんは、やっぱりかっこいいなと思う。もしかしたら嵐ちゃんがさっきからずっと固い表情をしていたのは、この事を気にしていたのかな。
先程の緊張感に包まれた雰囲気は一瞬で無くなり、この後行くことになった洞窟の話で盛り上がる。
「昔亜津と玲と探検してたら見つけた所でさ、中が広くて入り口からじゃ奥まで見えなくて」
「奥に進んでくとすっごいでかい鍾乳洞になってて、光の反射とかでかなり幻想的な空間なんだよ」
「そんな所が近くにあるんですね」
「へぇー、楽しみだなぁ!」
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