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かっこいいと言われたい

「さあいっぱい食えよ!」 「足りなかったらまだ材料あるから遠慮なく言いな」 机に並ぶ大量の食事を前に十六弥くんと亜津弥くんのドヤ顔が止まらない。それもそのはず、机の上には様々な種類のパスタやピザ。どれも生地から手作りの本格的な料理の数々。ピザは別荘にある窯で焼いたもので、香ばしい香りが部屋中に漂っている。 『いただきます!』 「うまっ」 「生地がもちもち〜!」 「これが全部手作りだなんて・・・」 「十六弥さんも亜津弥さんも凄すぎ!」 十六弥くん達の料理はどれもみんなの口に合ったようで、どんどん皿が空いていく。十六弥くん達も満足そうにその光景を見ながら、いつの間にか用意していたワインを片手にピザを摘んでいた。 「これレイラの好きなやつだよ」 「こっちのも食べな」 「ありがとー」 カエラとサハラの間に座った俺に二人は構いっぱなしだ。俺達は小さな頃からカエラはお兄ちゃんは弟達の面倒を見るべし!サハラはお兄ちゃんの気持ちも弟の気持ちも理解してあげるべし!俺はお兄ちゃん達の言うことをしっかり聞くべし!と育てられてきた。なので三つ子だけどそれぞれ雰囲気が違って成長したのだと思う。双子でも育った環境や生活の中で見た目や性格が似てないパターンがあるが、俺達はまさにそれに当てはまるのだろう。 そんなことを考えていると向かいに座った嵐ちゃんからの視線を感じた。しかし俺がそちらを向くと自然な流れで視線を逸らされる。・・・たぶん嵐ちゃんは俺がわざとカエラ達の隣に座った事に気づいているんだろうな。 昼間のもやもやした気持ちを引きづっている俺には、今は素直に嵐ちゃんに甘えることが出来ない。俺の気持ちの問題なので、嵐ちゃんには悪い事をしているという後ろめたさがあるけど。 「レイラ〜、お前は三人の中でも一番チビなんだからしっかり食えよ」 気づくと既に三本目のワインを開けている十六弥くんがニヤついた顔でこちらを見ていた。確かに身長や体格は兄弟の中では一番小さいけど、成長期のおかげでだいぶ追いついたのに。 「俺この半年で15cm身長伸びたんだけど!」 「まあ俺達も同じくらい伸びてるんだけどな」 「レイラは今のままで可愛いから良いんだよ」 カエラとサハラはすでに180cmある。俺もあと2cmだけど、170cm台と180cm台には何か見えない壁を感じる。普段なら気にしないのに今は可愛いと言われる事にムカッとする。 「え、てかレイラ君半年前までは160cm台?」 「163cmくらいだったかな」 「俺より小さかったんだ!!」 今いる中で一番小柄な凌が嬉しそうに声をあげる。確かに半年前までの俺は同年代の中でも比較的小柄だった。ま、今は凌より大きいけどね! 「小さいレイラはまぢ可愛かったよなー」 「今でもレイラ君は十分可愛いよ」 「まあな〜」 小さい俺を知っている騎麻の言葉に響ちゃんが反論する。響ちゃん、今俺は可愛いよりかっこいいと言われたいよ! 「でも確かにレイくんって身長は俺とあんま変わらないのに、何か弟ーって感じで小柄に見えるんだよね」 「確かに年下感が強いというか」 安ちゃんとこのくんまでそんな事を言い出した。要と凌までうんうんと頷いて同意しているのには少し納得がいかない。 「言っとくけど俺、4月2日生まれだから学年では一番お兄さんなんだからね~」 そう、実は俺達兄弟は誕生日でいうと学年内では一番早いのだ。むしろ一日違えば騎麻達と同学年。なのに俺はそんなに弟感が強いんだろうか?まあ、ちょっと末っ子気質なとこがあるのは認めるけど。

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