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世間にどう思われても

食事を食べ終え一通り片付けをした後は今日の夜のイベント、花火の準備に取り掛かる。完全に飲み会を初めてしまった十六弥くんと亜津弥くんは、上機嫌でおつまみを作りに行ってしまった。 「ここにバケツ用意したから終わったのはこの中に突っ込んでってー」 「騎麻、蝋燭とかある?」 「それなら確か物置にあったはずだからとってくるよ」 買ってきた大量の花火の袋を開けながらどれから始めようか迷う。やっぱり線香花火は最後に置いておくとして、吹上花火もやっぱり後半にもっていくべきかな?ねずみ花火は仕掛けるタイミングが大事だし、ロケット花火はいつが良いかな・・・。 「レイラ」 「・・・なあに、嵐ちゃん」 名前を呼ばれ、振り向かなくてもわかる。それでもゆっくりと振り返りいつも通りを意識して笑う。いつも通りいつも通り。 「怒ってる、って感じとは違うな。何があった。俺か?」 ・・・まあ、気にしないように振舞ってたつもりだけど、違いに気づかない程嵐ちゃんは鈍感じゃないよね。 別に嵐ちゃんが悪いとかじゃない。俺が勝手に気にしているだけ。だから、何と言えばいいか分からない。 「なんでもないって、言っても意味ないよね」 「ああ」 「ん~・・・俺が悪い、のかなぁ?」 自分の中でのもやもやの、原因が昼間の嵐ちゃんと十六弥くんの会話なのは分かっている。でも、その会話で別に気にするような事を言われた訳では無い。ただ、嵐ちゃんの不安そうな姿が頭から離れないだけ。 嵐ちゃんは俺達の関係を人に、いや、家族にか?知られたく無かったのかな・・・。考えれば考える程昼間の姿が鮮明に思い出され、視線は少しずつ下へと下がっていく。今どんな表情なのか、見るのが少し怖い。 すると、目の前にいた嵐ちゃんが急に動き、俺の体を抱きしめた。 「誰が悪いとかじゃない。お前が何を感じて、何を気にしているのか、それを教えてくれ」 「・・・俺さ、嵐ちゃんと付き合ってるって事、付き合い出した翌日には家族に言ってたんだよね。それをみんなが否定しない事も、喜んで受け入れてくれるのもわかってたし。初めて本気というか、理解して付き合った相手だからね」 あまりに真剣な嵐ちゃんの言葉を聞き、自分の中で消化しようと、消化したいと、思っていた事を口に出す。別に嵐ちゃんを責めたいわけではないので、ただ、聞いて貰いたい。 「でもみんながみんな、そう思ってくれるわけじゃないって、むしろ俺らが少数派なのは頭では分かってたつもりだったんだよ。だけど今日の嵐ちゃんを見て、嵐ちゃんも男同士ってのに不安を感じてたのかなって思ったら、ちょっと寂しくて」 そう嵐ちゃんに思わせてしまった俺自身が情けなくて、悔しい。 「俺はどう頑張っても男だし、性別は変わらないけど、もしそれが嵐ちゃんの不安要素になってたんなら、やだなぁ・・・て、」 一通り思いを伝え口を閉じる。言ってしまった。俺は男同士であることになんの不満もない。それが世間的に受け入れられなかったとしても。 「俺はお前の全てに惚れた。見た目や中身、そうお前を育てた家族に。なのにお前らの考え方を、俺はまだ理解出来てなかったんだよ」 ずっと黙っていた嵐ちゃんが話し始める。俺の勝手な想いを聞いた上で、嵐ちゃんはどう思ったんだろう。 「俺らの関係を学園の奴らはすんなりと受け入れてくれただろ。あれは特殊な学園内だからこそで、外に出たらそうはいかないことは分かっていた。だからお前も外ではキスやハグはあまりしないだろ?」 「・・・うん」 「俺達が間違った関係だとは思わないが、世間では異分子なのは確かなんだよ。ましてやお前はTOKIWAグループの御曹司だぜ?注目度は一般人の何万倍もある。それを十六弥さん達を目の前に、今日実感した」 確かに世界的に影響力を持っているTOKIWAでの動きは世界が注目する。それがもし市場には関係の無い、子供の色恋沙汰だったとしても、相手によっては食いつきネタにされるだろう。 「だからもし十六弥さん達に否定されて引き離すように動かれたら、俺みたいな力のない餓鬼には抵抗の手段が無い。そう思うと、俺達の事を知られるには緊張も不安もあったんだよ」 「でも、俺の家族はそんなこと・・・」 「絶対にしないし、むしろ全力でお前らを守ってやるぜ?」

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