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最強の味方

急に聞こえた声に驚いて顔を上げる。そこにはこちらを見下ろすように立つ十六弥くんの姿があり、その表情はいつも家族を見つめる時のように優しい。 「そうですね。昼間の十六弥さんの言葉を聞いて、何でそんな不安を持っていたんだろうって馬鹿馬鹿しくなりました」 「まあそう考えるのが、"世間一般的"な考え方なんだろうよ。だけど嵐太郎、お前が惚れたのは俺の息子だぞ?常識が通用するなんて、レイラ相手にも俺達にも思うなよ」 会話をし始めた二人の話す内容を黙って聞く。昼間とは全く違う、緊張した様子の一切ない柔らかい雰囲気。 「レイラ、お前と嵐太郎は恋人同士だったとしても、お互い別の考えを持つ他人なんだよ。だからお互いが理解出来ない時や、不安になる時は、必ずある」 確かに俺と嵐ちゃんは恋人で家族のように思っていたとしても、それでも実際は他人同士だ。繋がりはお互いの気持ちだけという絶対的なものではない。 「おまけに恋愛は初心者でお互いまだ餓鬼。そんな二人が不安や不満も無くやってくなんて無理なんだよ。だから、思った事や感じた事は些細なことでも出来るだけ共有しろ。自分だけが考えたってそれは相手には伝わらない」 で、二人じゃ解決出来ないなら俺達に言え、俺達に解決出来ないものは無いからな。そう自信満々に言ってのける十六弥くんに、確かにその通りだと思う。 俺達にはまだまだ自分の考えを伝え合う事が出来ていなかった。不安を持っていた嵐ちゃんと、それに気づけなかった事を悔しく思った俺。どちらもそれを伝えれなかったからそこ、起こってしまった小さなすれ違い。 「やっぱ十六弥くんって凄いね」 「俺は神ではないけど、神以上に何かを変える力も影響力も持ってると自負しているからな。そんな俺を味方に持ったお前らが、適わない相手なんていないんだよ」 「それは頼もしいですね」 だからもっとお互いを信じてみろ。そう言う十六弥くんは何処までも自信に満ち溢れている。 「嵐ちゃん変な態度とってごめんね」 「ああ、これからはお互い言葉にすることを大切にしよう」 「うん」 お互いを強く抱きしめ合う。半日程とはいえ、嵐ちゃんには悪い事をした。俺自身もいつものように嵐ちゃんに甘えれないのが寂しかったので、これからは些細な事でも口にしよう。 「第一レイラ、お前は元々考えるのが苦手だろ。普段直情的に動くタイプなのに嵐太郎相手に何を気をつかうんだよ」 「う"~確かにいつもは思ったら即行動って感じだけどさ~」 ほんと十六弥くんの言う通り過ぎて、なんと言うか流石パパン。 「お前は悩むと考えが明後日の方向に飛ぶんだから、思ったことそのままぶつけていけ」 ごめんねーという気持ちを込めてぐりぐりと嵐ちゃんの首元に頭を擦り付ける。確かに俺には一人で考え込む事は向いてないかもしれない。 「そろそろ花火してこいよ」 別荘の入口付近で話していた俺達をおいて、みんないつの間にか花火をスタートしている。花火を振り回す凌に要が怒鳴る声が聞こえ、思わず嵐ちゃんと小さく吹き出した。視線を感じたのか、カエラとサハラがこちらに気付き手招きしている。 「早くおいでー!」 まだまだ飲み足りない十六弥くんは中にいる亜津弥くんに声を掛け、バルコニーで飲み会の続きを始めるみたい。つまみとワインを持って出てきた亜津弥くんにぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、 「仲直り出来たみたいだな」 ・・・そうだよね、気付いてないわけないよね。気まづそうな顔をする俺達を見て大人達が声を出して笑う。 「・・・花火するか」 「そうだね」 やっと腰を上げた俺達は楽しそうに花火をするみんなの元へと向かう。騎麻と響ちゃんに手持ち花火を渡され火をつけると、勢いよく噴き出した火花が次々に色が変え、暗闇を彩っていく。 「嵐ちゃん!綺麗だね!」 「そうだな」 嵐ちゃんとはこれからもまたすれ違ったり喧嘩をしたりもあるだろう。でも最後は今みたいにお互い笑顔でいたいな。

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