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別荘三日目

別荘三日目。最終日の今日は朝からまたみんなで海に来ている。午前中はモータージェットを引っ張り出し、ウェイクボードに挑戦したり、サーフィンやボディーボードをしたりとマリンスポーツを楽しんだ。 俺達兄弟や騎麻は小さな頃から毎年夏には十六弥くん達に連れられ、マリンスポーツを楽しんでいるのでそれらは得意だ。嵐ちゃんやこのくんも経験者で、二人ともサーフィンがとても上手かった。他のみんなも持ち前の運動神経ですぐに上達し、それぞれ気に入ったものへチャレンジしている。 「ひゃっほーーーいっ」 俺は十六弥くんに引いてもらいウェイクボードで水面を翔ける。腕の力と波の勢いを付け大きく飛び上がり空中を一回転。着地と同時に大きく上がる水飛沫にテンションが上がる。 「うはっ、きっもちいーーっ!!!」 その後も何度かジャンプやスピードを楽しみ浜で待つ騎麻達の元へと戻る。アドレナリンで高まった気持ちが収まらないまま騎麻とバトンタッチ。 「相変わらずレイラが一番ジャンプは高いな〜」 「本当身軽だよな」 順番待ち中のカエラとサハラに並んで砂浜に腰を下ろす。持久力が高く体力に自信のあるカエラ、パワーで押し切るタイプのサハラ、瞬発力と身軽さが売りの俺。俺達はスポーツをしても個性がバラけるから面白い。 「よう、休憩中か?」 「「「嵐ちゃん、このくんおつかれー」」」 綺麗に揃ったことに互いに笑い声が上がる。こういう時はやっぱり三つ子だなと思う瞬間だ。 「要や凌達は一緒じゃなかったのー?」 「あいつらは響也や安吾とボディボードやってたぞ。・・・ほら、あそこ」 「あ、本当だ」 嵐ちゃんが指差す方向に目をやると、確かに四人がボディーボードをしていた。大分上達していて、みんな今日が初めてとは思えない程上手に乗りこなしている。 「おーい!」 背後から聞き慣れた声が聞こえ、振り返ると大量にスイカを抱えた亜津弥くんが歩いてくる。みんなで駆け寄り亜津弥くんが持っていたスイカやビニールシートを受け取り手分けして運ぶ。ずっしりと重く身の詰まったスイカが6玉。 「これでスイカ割りできるね!」 「6玉って事は一人半玉か」 「こいつらいれば一瞬で無くなるさ」 このくんの言葉に亜津弥くんが俺やカエラ、サハラを指しながら言う。俺もよく食べる方だと思うけど、カエラもサハラも負けていない。6玉なんてあっという間に食べ終わるだろう。 みんなが戻ってきてからスイカと一緒に亜津弥くんが持ってきてくれた、おにぎりやサンドイッチで軽く小腹を満たせ、最終日のメインイベントであるスイカ割り大会の始まりだ。 ビニールシートの中心にスイカを置き、その正面に立った十六弥くんが拳を強く握り締める。そのまま勢いよく引いた拳を強くスイカへと叩き込む。 ベシャッ 「よっしゃーーーっ!!」 「十六弥くん流石ー!」 「いや力強すぎて中味飛び散ってるからっ」 「はいはーい!次俺やりたーい!!」 十六弥くんの拳を真上から受けたスイカは真ん中から勢いよく潰れるように弾けた。割れたスイカは持ってきていたトレーに移し、シートの上に新しいスイカをのせる。 「・・・やっぱりおかしいと思う。俺の知ってるスイカ割りは素手で割ったりしない」 「大丈夫だよ凌君、俺が知ってるのも素手では割らないから」 「俺が知っているのもそうだな」 俺が構える後ろで凌と響ちゃん、このくんがそんな会話をしていた。でもみんな分かってないなぁ。十六弥くんがもし目隠しして棒を振り回したりしたら、死人が出るに決まっている。この素手でのスイカ割りが一番安全なのだ。

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