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はじめまして

別荘から戻って一週間はあっという間に過ぎた。昼間は兄弟や従兄弟達、ティノと遊び、夜は大人達の飲み会で遊ばれる。それを繰り返して迎えた嵐ちゃんの家に行く当日。 「レイラ、これ持っていきなよ」 「こっちもお土産に持っていきな」 家を出る前にカレンちゃんが用意してくれた新しい服を着、カエラとサハラにはお土産を渡される。ティノは可愛く尻尾を振って見送ってくれた。 「そろそろ行くぞ」 「はーい」 今日は嵐ちゃんの家の近くに予定があるらしい十六弥くんが送ってくれる。車庫から出したハーレーに跨る十六弥くんの後ろに、渡されたヘルメットを被り跨る。 ゆっくりと動き出した車体が徐々にスピードにのる。うちから嵐ちゃんの家まではバイクでだいたい25分程と実は意外と近い。振り落とされないようにしっかりと掴まり、流れていく風景を見ながらこの後の事を考える。 昨日電話で話した嵐ちゃんの話では、今日は家には丁度仕事の休暇が重なった家族が全員揃っているらしい。そして俺が来ることは伝えてあるけど、今付き合っているのが俺だとはまだ話していない。つまり、嵐ちゃんの家族は今日初めてその事を知る。 『何を言われるかはわからないけど、俺はお前を手放す気はないから』 昨日嵐ちゃんは電話でしっかりとそう言ってくれた。勿論俺としてもそのつもりだし、不安も特にない。だって俺達には沢山の味方がいるのだから。 そんな事を考えているうちにあっという間に俺達を乗せたバイクは嵐ちゃんの家の前へと到着した。比べるのもあれだけど、周りの家よりも遥かに大きな洋風の建物。そこにしっかりとした字で書かれた"結城"の文字が、間違いなくここが嵐ちゃんの家であることを示している。 「じゃ、嵐太郎によろしくな。しっかりかましてこい」 「送ってくれてありがとう!」 颯爽と走り去る十六弥くんの背中を見送り、目の前の門の横に付いたインターホンを鳴らす。リンゴーンと少し重みのあるベルの音が鳴った後、自動的に門が開き始めた。 『いらっしゃいませ。常磐様ですね、お伺いしておりますので、どうぞそのまま中へお入りください』 インターホンから聞こえた声に従い門の中へと足を進める。正面に見えた玄関へと近づくとタイミングよく開いたドアから姿を現した嵐ちゃんに軽く手を振る。 「迷わず来れたか?」 「十六弥くんが送ってくれたから大丈夫だったよ」 嵐ちゃんに続き玄関の扉を潜ると数人のメイドが出迎えてくれ、軽く挨拶をし通されるままについていく。 あまり人の家柄には興味はないので直接聞いた訳では無いけど、一応常磐の人間としてそれなりに情報は持っている。嵐ちゃんの家、つまり"結城"といえば国内シェアNO.1の自動車メーカーの社長と同じ名前だ。 「来て早々で悪いんだが、俺の家族に会ってもらってもいいか」 「そのつもりで来てるから大丈夫だよ」 俺の言葉を聞き優しく微笑む嵐ちゃんにぐしゃりと頭を撫でられる。流石に全く緊張していないというわけでは無さそうだけど、いつも通りに近い嵐ちゃんの姿にホッとした。 大丈夫。俺達は一人では無いし、俺は嵐ちゃんの事も、嵐ちゃんを育てた家族の事も信じているから。

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