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地球温暖化を加速させるつもり?
「俺は赤組の大将を努める3-Aの小野寺開だ!」
放課後に行われた赤組の顔合わせで、今みんなの前に立って話しているのは大将の三年生。大柄で筋肉のしっかりした、the・熱血☆って感じの人。
「凌あの人知ってる?」
隣に座る凌に話しかける。今は三年生の教室に一、二年含め三学年が入っているので、普段はゆったりした教室内も流石に窮屈だ。
「あれは空手部の元主将だよ」
「だからあの筋肉か〜」
「で、確かーーー」
「常磐レイラ!!!」
「!?!?」
急に大声で名前を呼ばれ驚く。声の正体は今まさにみんなの前で話している最中の大将小野寺開。
え、俺の声そんなうるさかった!?みんな割りと喋ってたよね!?
何故かこちらをしっかりと見つめたままズカズカと歩み寄ってくる姿に戸惑う。目の前までやって来た大将の右腕が上がるのを視界がとらえ、殴られる!?とビビった俺は咄嗟に目を閉じ衝撃に備えた。
・・・しかしなかなか衝撃はやってこない。
「レイラ君レイラ君、小野寺先輩見て」
小声で凌に耳打ちされ恐る恐る目を開ける。するとそこには右手をこちらに差し出した状態で直角に上半身を曲げ、頭を下げる大将の姿が。いや、え、どういうこと。
「小野寺先輩って噂じゃレイラ君の熱烈なファンなんだよ」
「常磐レイラ!!!俺は最後の体育祭があなたと同じ組になれて本当に、本当に嬉しい!!!!是非、俺と共に手を取り優勝目指して戦おう!!!!」
この距離でそんな大声を出す必要は無いと思うんだけど。周りにいた他の生徒も声の大きさに耳を押さえる。
手を差し出した状態から動かない大将にそっと手を伸ばして握手する。
「よ、よろしく大将」
その瞬間、ガバッと勢いよく体を起こした大将がこちらを見つめ握った右手に左手も加えしっかりと握り締める。
「よろしく!!よろしく常磐レイラ!!!あぁ、俺は今あの常磐レイラと握手を・・・。俺達は絶対勝つぞーーーー!!!!!」
なんだかこの人怖い。
その後もなかなか手を離そうとしない大将を三年生が力づくで引き離してくれ、今は俺の周りをボディガードのように囲んでいる。俺から離され哀愁漂わせながら元の位置へ戻った大将も、今では初めの熱血っぷりが復活して力強く体育祭への想いを語っている。たまにこちらをチラチラ見ては俺と目が合うと嬉しそうに周りに花が飛ぶ。悪い人では無いんだろうけど、あのゴツい見た目とのギャップがひどい。
「ごめんねレイラ君〜、あいつの事は軽く流しときゃいーから」
「おのっち阿呆だけど良い奴だから許してあげて〜」
周りにいる三年生が口々に大将のフォローをしてくるので、多分みんなにも好かれているんだろう。まぁ、赤組の大将として選ばれるだけの人望はあるわけだ。
しかし何故か黒板の前で猛スピードでスクワットをする大将には疑問しか浮かばない。なんというか、多分大将の脳みそは筋肉で出来ているんだと思う。
「常磐レイラ!!是非応援合戦ではチアの姿で応援してくれ!!!」
「いや、俺学ラン着たいんだけど」
「学ランか。それなら是非セーラー服を!!」
「だから学ランだってば!!」
俺の言葉が聞こえてるのか心配になる。しかも周りからチアやセーラー服に賛成する声が上がっているのにも納得がいかない。凌に学ランの写真と一緒に見せてもらったけど、俺が求めるのはセーラー服じゃない。まず、スカートじゃ戦闘服として格好がつかないし!
「応援合戦はパフォーマンスで盛り上げるのが目的だから、レイラ君の女装、有りだと思う!!」
「まあお前の女装なら間違いなく盛り上がるだろうな」
「だったら要が女装しなよ」
人事だと思ってみんな好き勝手言い過ぎだ。
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