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「要いけーーーーっ!!」
スタートのピストルの音と共に一斉に走り出した六人の中で要が一歩リードしている。そのまま徐々に2位についている白組の生徒との距離を開きながら1位でゴールテープをきった。
『1位でゴールしたのは赤組!続いて白、黄と続きます!!!』
「よっしゃぁぁぁー!!」
「要やるじゃん!!」
近くにいる凌やクラスメイトとハイタッチして要の1位を喜ぶ。今までの9レース中1位に入った赤組は三人。やっぱり100m走に出る生徒は足が速い人ばかりで点数は全体的に接戦状態だ。残りのレースで出来るだけ上位に食い込み点数を稼ぎたい。
「あ、次会長走るみたいだよ!」
「赤組はとっきーくんか!とっきーくんって陸上部だよね!」
俺達の赤組と騎麻達青組は今僅差で1位争い中だ。ここは是非とっきーくんこと時田先輩に活躍してもらわなくては!
・・・そう思ったんだけど、やっぱりここは我らが天羽学園の生徒会長様様。ここで相手が陸上部だろうと全く危なげもなく余裕で1位を掻っ攫っていってくれた。
『オォォォオオ!!流石は我らが生徒会長常磐騎麻!余裕の1位でのゴールです!!!』
惜しい!!惜しかったよとっきーくん!!相手が騎麻じゃなきゃきっと1位だった!!・・・ってのは慰めにもならないけど本当に惜しかった。
その後のレースの結果としては、順位は青赤黄白緑の順だけど点差はほとんど無い。
「個人種目は点数の配点も少ないからね〜。ここはやっぱ団体種目とリレーを確実にとっていくしかないね!」
「午前だったら棒倒し?」
「あ、あとレイラ君が出る仮装障害物競走も得点高いよ!」
「まぢか!」
それは頑張らなきゃ!そうしている間にも100m走に出た人達が戻ってき、次の種目に出場する人達が入れ替わるように出ていく。
「生徒の待機場所と保護者席が近くてさ、十六弥さんと亜津弥さんにすっげぇ絡まれたわ」
「なら俺も次出番だから会えるかな!」
「多分な。周りの親達からの注目度やばいけど」
かなり注目されたのか要の顔は少し引きつっている。今やっている種目の次はとうとう俺の初種目、借り人競走だ。そろそろ入場門付近に招集がかかるので、ついでに十六弥くん達と話せたらいいな〜。
「常磐レイラ」
「ん、大将どうしたの〜?」
初めはどう対応していいか迷った大将だけどこの三週間で大分慣れた。相変わらずのフルネーム呼びだけど初めの頃より大将も俺に免疫が出来て、話す時の興奮も収まってくれたので話しやすい。
「頑張れ」
「ありがと大将!」
俺にそれを言うためだけに呼び止めたのか、俺の返事を聞くと嬉しそうに頷いてテントに戻っていった。大将は良い人だ。ちょっと暑苦しいだけで。丁度かかった招集のアナウンスに同じ種目に出る赤組のメンバーと一緒に入場門へと向かう。
さぁ、とりあえずさくっと1位取ってきますかね!
「十六弥くん!カレンちゃーん!」
入場門付近へと向かうと要の言った通り保護者席がとても近かった。多分折角来てくれた保護者と生徒の交流のために、学園側が配慮してくれたことなんだろう。相変わらず色気ダダ漏れの十六弥くんと、今日もセクシーかつキュートなカレンちゃん。
二人は赤をメインに使ったコーディネートで、きっと俺達赤組の応援なんだろうけど、すごい目立っている。ちなみに十六弥くん達の背後でひらひらと手を振っている亜津弥くんと華南ちゃんは青のペアルックだ。周囲の保護者達はみんな控えめな色が多いので浮きまくっている。流石だなぁ。
「おいレイラ」
十六弥くんが何でか俺に凄んできた。え、ちょっと怖いんだけど、俺なんかしたっけ。
「何青組に負けてんだよ」
「え、」
「赤組今青組に負けてんだろ!さっきから亜津がすっげぇドヤ顔でムカつくんだよ!!」
そういうことかよ!負けてるって言っても点差はほんの少しだし、まだ体育祭は始まったばっかりだ。しかも俺はまだ一つも種目に出場してないのに何故か怒られた!
俺達に注目していた周りの保護者や生徒達も十六弥くんの発言に唖然としている人達がほとんどの中、一部の人達が耐えきれずといった感じに吹き出した。そちらの方へ視線をやると見知った人間がちらほら。
「よ、レイラ君久しぶり〜」
「次出るの?がんばってー!」
そう言い手を振ってくるのはTOKIWAの社員達だった。見てみると会社のパーティで何回か会ったことのある顔が周囲に何人もいる。そりゃ膨大な数の社員がいるTOKIWAだ、その社員の子供がTOKIWAの経営する学園にいるのも当たり前といえば当たり前。実は何人かは学校生活をしている中で声をかけられて知っていたけど、それ以上にこの学園にはTOKIWAの関係者がいるようだ。
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