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鶴の一声とはまさに

その後もスムーズに体育祭は進み、次は午前中のメイン競技の一つ"棒倒し"だ。攻めと守りに分かれ、それぞれのチームの色の旗の刺さった棒を取り合う。参加人数も多く勢いと豪快さもあり、かなり盛りあがる人気の競技らしい。 出場する人も運動部や力のある人がほとんどで、赤組からは要やみっちゃん、ゆっきー、晃太くん、大将などが出場だ。他の組には嵐ちゃんやのいちゃん、嵐ちゃんのファンクラブの漢気会のメンバーも多数姿が見える。全体的にガタイのいい人が集まっていた。 『続いての競技は棒倒し!男同士の力のぶつかり合い・・・ここに集まった力自慢の選手達の熱い戦いは盛り上がること間違い無しです!!!!熱くなりすぎての怪我には十分気をつけて下さい!!』 「おっしゃいくぞぉぉぉぉぉぉおーー!!!!」 『ゥオォォォォォオオーー!!!!』 どこの組もすごい盛り上がりで見ているこちらまでわくわくしてくる。半分は自分達の旗を守るために棒を支えて、残りの半分は体育委員の笛の音と共に敵陣に乗り込んでいくと、取っ組み合い揉みくちゃ状態だ。殴ったりは流石に無いが腕や服を引っ張り引き摺られたり、乗り上げて動きを制限されたりとかなり激しい。 「わっ大将すごい!」 そんな中襲いかかってくる敵をものともせず、投げ飛ばしたり攻撃を交わしながら敵陣に突っ込んでいく大将の姿。その後ろに続くのは晃太くんと要で、周りでも四方からやってくる敵を他の赤組がなぎ倒している。そのままの勢いで白組に乗り込んだ大将達は棒へと飛び掛ると、引き剥そうとする敵をパワーでねじ伏せまず一つ目の旗を奪った。 「青組いけいけぇぇぇーーーっ!!!」 大将達に気を取られているとドッと隣のテントからの声援が湧き上がった。声につられ青組の方に目をやると、凄い勢いで敵陣に突っ込んでいく嵐ちゃんとのいちゃんの姿が。それはもう本当に凄い勢いで。 いつもの気怠い姿は何処へやら。生き生きと相手を吹き飛ばす嵐ちゃんに驚くが、このままではまずい。嵐ちゃん達青組が赤組の方へと攻め入ろうとしているのだ。 「ねぇ!嵐ちゃんちょー強いんだけど!!」 「感心してる場合じゃないから!」 余りの勢いについ嵐ちゃんを褒めてしまった。というかいつの間にか大将と嵐ちゃんが組み合っている。身長は嵐ちゃんの方が高いけどガタイは大将の方が上だ。組み合った状態で睨み合う両者、どちらも一歩も引く様子はない。その周辺でものいちゃんと組み合う晃太くんや、青組だけでなく残っている緑組の相手をしながら攻めようとする要達の姿が。 (嵐太郎視点) 黄組の旗を奪った後、視界に入った赤組へと鴇と共に乗り込んだ。それに気づいた小野寺さんが迷わずに俺へと突っ込んでき、両手を合わせ組み合った状態で固まる。 「結城っなかなかのパワーじゃないか!!」 「そりゃどーもっ!」 伊達に空手部の主将をしているわけじゃない。鍛えられた体と体幹になかなか姿勢を崩すことが出来ない。 俺はこの人が苦手だ。嫌いになる程関わったことがあるわけではない。しかし、この人はレイラの事を一方的だったとしてもかなり気に入っている。それが恋愛感情なのか庇護欲のようなものなのかはわからないが、自分以外の人間があいつに向かってそういった感情を持つのは面白くない。ただ、あいつはそういった感情をかなり無自覚に持たれやすい見た目なので、仕方がないのかもしれないが。 ・・・この人には負けたくねぇな。 普段そこまで人に対する対抗心などは持っているタイプではない。ただ今回は負けたくない、そう思う。 しかし力では五分五分。本格的に格闘技で鍛え抜かれた小野寺さんを相手に持久戦は出来るだけ避けたい。そう思い一気に畳み掛けるために一瞬ほんの少し力を緩め、体勢を僅かにズラしすぐ様力を入れ直す。ズレた姿勢により力の入れ方が変わった瞬間をついて一気に勝負を仕掛けようとした、その瞬間ーーー。 「たぁぁあいしょぉぉぉぉお!!!優勝する気あんのかぁぁぁぁぁーーーっ!!!」 「!!」 応援用のテントから響いてきた声に大袈裟な程に反応する目の前の敵。すると途端に先程まで五分五分だと思っていた力がぐっと増し驚く程の強さで押し込まれる。 「っくそ!」 急に増した力に反応出来なかった俺は勢いのまま押し負かされていた。俺を倒した小野寺さんはそのまま青組の陣地へと入り込みあっさりと旗を奪ってしまった。 「ウオォォォォオオーーーッ」 雄叫びと共にテントへ向けて腕がちぎれそうな程手を大きく振っている。その先ではチームメイトとハイタッチを交わすレイラの姿があり、あちらからも嬉しそうに手を振り返してきた。 なんだこのやるせない気持ち。 (嵐太郎視点終了)

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