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仮装障害物競走

『ここまでの順位を発表します!1位赤組!2位青組!3位ーーーー』 「赤組いい感じ!!」 「午前はあと仮装障害物競走で終わりだし、このままなら1位で通過出来そうだね!!」 いえーい!と凌とハイタッチ。体育祭、ちょー楽しいんですけど!!次は俺の二つ目の種目、仮装障害物競走なので、再び入場門へと向かう。そこで棒倒しを終えた人達とすれ違う。 「おい」 「あ、嵐ちゃ・・・ん"っ!!」 近づいてきた嵐ちゃんが急に俺の頬っぺたを摘みむに〜っと左右に伸ばしてきた。しかもなかなか手を離さないどころからどんどん加わる力が強くなっていきーーー。 「いひゃいっ、ぃひゃいっへ!」 頬っぺたを摘む手をバシバシ叩き抵抗するとやっと手を離した嵐ちゃんは、そのまま青組のテントへと戻って行ってしまった。え、なんなの。 ヒリヒリする頬を擦りながら仮装障害物競走に出る生徒の列に並ぶ。嵐ちゃんの行動の意味は謎だけど、今俺の頬っぺたが可哀想なことになってるのは確実だ。 「レイラ君!カレンさん来てるね!!・・・ってその頬っぺたどうしたの!?」 「わっ、真っ赤だね」 仮装障害物競走に出るらしいまみちゃんと響ちゃんが俺の姿を見て声を掛けてきたけど、赤くなった俺の頬っぺたを見て驚いた声をあげる。 「嵐ちゃんがご機嫌斜めだった」 「え、それ嵐太郎にやられたの?」 可哀想にと、響ちゃんが両手で優しく俺の顔を包んでむにむにとマッサージしてくれる。少しひんやりした体温が気持ちいい。 その後すぐに入場門からグラウンドへと移動させられると、グラウンドにはさっきまで無かった電話ボックス程の大きさの箱が並んでいた。それは簡易的な更衣室で、その中で衣装に早着替えして、そこから障害物競走が始まるらしい。 「仮装ってどんなのがある?」 「ん〜、俺達も出場するから衣装は秘密にされてるんだけど、去年とかだと着ぐるみやユニホームとかだったかな。あと、大体1レースに一つは女装が混ざってる」 「そうなんだよね、俺女装はやだなぁ・・・」 響ちゃんの女装可愛いと思うけど。あぁでも納得だな。この仮装障害物競走、入場門に集まった時点でやたら顔が良い人、というか中性的な顔の人が多いと思ったんだ。多分女装があるのを前提で、あえてそういう人を選んでいる。中に数人混ざった大将みたいなガタイの良い生徒は、多分ウケ狙いの選択だろう。 俺は別に女装に抵抗は無い。というのも昔からカレンちゃんによく女物を着せられて遊ばれていたし、成長期前の俺はカレンちゃんのブランドでレディースの方のモデルもたまにやっていた。何より似合うのを知っているので別に恥ずかしくも何ともない。 『午前の最後を飾るのはこの競技、"仮装障害物競走"です!!一部を除いて各クラスの綺麗どころが揃っていて、とても華やかです!!!さあ、今年の女装の餌食となるのはどの生徒なのでしょう!?!?個人的には是非、是非!レイラ君には女装をして頂きたぁぁぁぁぁあい!!!』 いや、だからこの放送部員、さっきからなんてゆう実況してんだ。俺のこと大好きすぎるだろ。そして毎回その実況に反応して盛り上がるのを止めて欲しい。背後からは十六弥くん達のやれやれーっ、という完全に悪ノリした声も聞こえてくるのでうんざりだ。 「俺も是非レイラの女装を見たい」 「・・・久々に会ったと思ったら何言ってんのさ」 俺の隣には無表情ながらも少し目を輝かせたあっきーの姿が。ぶっちゃけあっきーの方が女装似合うんじゃないかな、身長的に。 「仮装した姿は冬弥に撮影を頼んで来たからバッチリだぞ」 「それは是非あっきーに女装引いてもらいたいなぁ」 そんな事を話している間に一組目がスタートした。この組は綺麗系四人にゴリラが一匹。しかもなんということだ、ゴリラくんが箱から出てきたらチアガールの姿に。 「ゴリラがメスゴリラに・・・」 「ぶはっメスゴリラって!!」 あっきーがいつも通りの無表情で零した発言に思わず吹き出す。応援席からもチアガールに対する冷やかしや野次が飛んでいるが、本人は気にすることなく周りに投げキスを飛ばしている。すごいサービス精神が旺盛なゴリラだ。 「ねぇあっきー」 「なんだ」 「意外とみんな苦戦してるね」 さっきからゴリラくんにばかり目が行っていたけど、よく見るとグラウンドに設置された障害物の数々に選手がかなり苦戦していた。更衣室から出てすぐの所にはまず平均台があり、左右から強風の扇風機で煽られる。そこを越えると次は2mの壁を乗り越え、次は3m程ある網を匍匐前進で進む。30kgの俵を運び、バットを使いその場で10回転してゴール。天羽学園の広いグラウンドをフル活用した障害物競走だ。 「ちょー疲れそう」 「だから午前の最終種目なんだよ」 なるほど。

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