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セーラー服と俺
「響ちゃんめっちゃ可愛いー!!」
俺の一つ前のレースに出た響ちゃんはなんと箱からうさぎちゃんの姿で飛び出してきた。バニーちゃんではなくうさぎちゃん。モコモコの着ぐるみ姿だ。
ぴょんぴょん跳ねるのではなく普通に颯爽と走って次々と障害物を越えていく。最後のぐるぐるバットでもほとんどふらつくことなく1位でゴールしていった。響ちゃんカッコ可愛い。
そして次は俺の出番。障害物を越えるシュミレーションはバッチリ、もう20回は1位でゴールした。体育委員の合図で走り始め更衣室の前に置かれた袋の一つを掴み箱へと入る。すぐに袋を開き中に入ってた物を取り出す。
「セーラー服・・・」
入っていたのは紺色のスカートと赤いリボンの白いセーラー服。しかもこのスカートかなり短い。あっきーくらいの身長ならまだいいかもしれないけど、俺が履くとギリギリ下着が隠れるレベルだ。きっと隣のレーンにいたゴリラくんだったら履くことすら出来ないんじゃないかな。とりあえず着ていたものを全て脱ぎさりセーラー服に着替え、靴下も一緒に入っていた紺色のハイソックスに履き替え外へ飛び出す。
『おおぉぉぉっとーーー!!更衣室から一番に飛び出して来たのは赤組常磐選手!!みんなの願いが届いたのか、なんと美しいセーラー服姿でしょう!!!ご馳走様ですっっっ!』
「うるさい!!」
実況に怒鳴り返しつつ最初の障害物である平均台へと飛び乗る。するとーーー、
「ぅわわっ風強っ!」
『ゥオォォォォォオオ!!!』
思いの他強い左右からの風に煽られ勢いよくスカートがめくれ上がった。下に履いているのは普段のボクサーパンツだから見られても気にしないんだけど、周りからの声がうるさいので一応手で抑えてみる。すぐ横には動きやすそうなバスケ部のユニホームを着たあっきーと、くまの着ぐるみを着たゴリラくんが追いかけて来ていた。ゴリラなのにくま。
ほとんど同じタイミングで平均台をクリアした俺達は揃って次の壁へと向かう。
『続いての障害物は2mの壁です!次はどんなエロハプニングが常磐選手を襲うのか!!!』
・・・もうこの放送部もグラウンドの声も全部無視しよう。そう思った俺は平均台から壁までの数メートルを全力疾走し、その勢いのまま飛び上がると壁の天辺に手を掛けそのまま壁を飛び越えた。降りる瞬間にまたスカートが捲れるがもう気にしない。
続いての網も半分程までは1位でスムーズに進んでいたのにまさかのまさか、途中であっきーに抜かれてしまった。が、次の30kgの俵で力のある俺がまた抜き返し1位になり、最後のぐるぐるバットに辿り着く。バットを軸に反時計回りに10回転し、ゴールを目指そうとしたその時ーーー、
「う"っ」
気持ち悪い・・・。予想していた以上に目が回り揺れる視界のまま下に敷かれたマットに倒れ込む。どうにかゴールを目指そうと立ち上がろうとするけど、回る視界のせいですぐに倒れ込む。全く動けない俺の隣をふらつきながらもあっきーが通り抜け、そのままゴールしてしまった。少し遅れてゴリラくんもゴールし、着替えに手こずり遅れていた警察官と袴の生徒もバットを使い回り出している。
『なんということでしょう!!1位で最後の障害物までたどり着いていた赤組常磐選手を抜いて先にゴールしたのは白組!!続いて2位は緑組です!!!』
「あーらら、レイラ大丈夫かよ」
「あいつ昔から三半規管弱いからな〜」
「ブランコでも酔うレベルだものね〜」
「バク転とかは普通にやるのにね」
保護者席では十六弥くん達がそんなことを話しているなんて知らない俺は、なかなか収まらない気持ち悪さをどうにか耐え、やっとの思いでゴールに辿り着くが、そのまま耐えきれずに座り込む。
「レイラ君大丈夫!?」
「う"うーーー響ちゃーん」
よしよしと背中をさすってくれる響ちゃんのおかげで少し気分は和らいでくるが、残念ながら順位は4位。3位までしか点数は入らないので全く赤組の加点にはならない。
「レイラ君可愛いパンツ履いてるね」
「・・・忘れて」
結局全校生徒にパンツを見られただけで体育祭の午前の部は終わった。何で今日に限って俺は普段履かないピンクの水玉のパンツを履いてきたんだろう。
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