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最終決戦

リレーを走るのは一学年5人づつの計15人。走る走順は自由なので誰を何処に持ってくるかがポイント、らしい。 どのチームもアンカーは大将が走ると決まっている。なので赤組の走順はバトンを受け取るのが異常に下手だった凌をスターターにし、一年生から順に二年、三年の順番だ。ちなみに俺は一年生のラストで二年生の晃太くんへバトンを渡すことになる。 入場門からそれぞれのスタート位置にスタンバイする。一周400mある天羽学園のグラウンドは陸上のトラックと同じ長さだ。半分の200mの地点の内側で自分の出番が来るのを待つ。 「まさか嵐ちゃんと同じ組とはね」 「しかも俺ら以外、三人Eクラだぜ?」 「燃えるな〜」 そう俺達の走る第5走者は赤俺、青嵐ちゃん、黄1-E、緑2-E、白3-E、というメンバー。ま、この中じゃ俺が一番速い自信があるので問題ない。俺より前の四人がコケたりバトンのパスミスをしない限りは俺が勝つ! 「って、みっちゃぁぁぁん!!!」 第4走者のみっちゃんがバトンを豪快に吹っ飛ばした。なんてゆうことだ。豪快に飛ばしたバトンを拾いにいったロスで殆ど差の無かった集団から大きく遅れをとる。 「悪いっっ!」 どうにか後半で追い上げて空いた距離を縮めたみっちゃんだけど、俺がバトンを受け取った時の前の集団との距離は約10m強。良いポジョンでバトンを受け取った嵐ちゃんは1位を独走中。 イケメンで走るのも速いなんて、嵐ちゃんかっこいいなぁ、なんて走り始めながら考える。そして一歩一歩進むにつれスピードが上がっていくのが自分でもわかった。 『おぉぉぉっとーーー!!!先程バトンを落とし大きく集団から出遅れた赤組ですが、なんということでしょう!!凄いスピードで追い上げていき集団に追い付きましたぁぁぁぁっ!!!』 「追いつくだけじゃ、ありませんよっと!」 目の前に迫った黄組をまず抜き、その前にいる白組抜き、少し離れて緑組を抜いた。あとは先頭を走る青組、嵐ちゃんだけ! 身長に合った大きな歩幅で走る嵐ちゃんを追いかけるけど、もう嵐ちゃんの先には次の晃太くん達の姿が見えてきた。意地でも嵐ちゃんを抜いて1位でバトンを渡したい俺は、更に足の回転をあげる。 「晃太くんっ!!」 「任せろ!!」 パシンっと高い音を立ててバトンはしっかりと晃太くんの手に握られ、どんどん遠くへと離れていく。短い距離とはいえ全力疾走で乱れた息を整えつつ隣で同じく息を整える嵐ちゃんに視線を向ける。 「俺の方が速かった」 「バトンを渡したのは同時だろ」 「でも俺最下位からだし!」 はいはい、と言って大きな手が俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。その手の感覚に満足した俺はつい笑顔になる。俺は嵐ちゃんに撫でられるのが大好きなのだ。 「ほら、応援しなくていいのか」 「そうだった!!」 今はまだリレーの最中。盛り上がっているグラウンドの声援に合わせて声をあげる。現在1位は赤組。その後ろに張り付くようについていく青組に、3位の緑がどんどん追い上げてきている。次々とバトンが次の走者へ渡されていく中で、最後から二番目、第14走者にバトンが渡る。そこで今まで何とか1位をキープしていた赤組が青組に抜かれてしまった。 「あぁーっ騎麻の馬鹿!!」 「お、やるじゃん騎麻」 俺とは逆の言葉を発する嵐ちゃんを睨みつける。そんな間にもバトンはアンカーの大将達に渡った。今のところ赤組は2位。 「がんばれ大将ーーーー!!!」 そういえば今走ってるのはみんな大将だった。そう叫んでから気付いた俺は一旦口を閉じる。大将の名前なんだっけ。おのっち、小野寺さん。下の名前がなかなか出てこない。 ・・・あ! 「開くんがんばってーーーっ!!」 思い出した名前を大声で叫んだ。

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