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『かんぱーい!』
カランっというグラス同士をぶつける音の後にごくごくと薄く色ずいた手元の液体を飲む。口の中に広がる弾ける炭酸とジュースとは違う独特の風味。
「んふふ〜」
「ご機嫌だな」
久々の酒と美味しいご飯でテンションは上がりまくり。夕方に帰ってきた亜津弥くんと風月も加わり既に賑やかな空間が出来上がっている。
「嵐君、君も遠慮しないでどんどん飲んでよ」
「ああ」
「風月何飲んでるのー?」
モスコミュールだね、そう微笑みながらグラスを傾ける風月。普段は風月もあまり酒は飲まないけど、今日は俺達と一緒に解禁されたらしい。程よく日焼けした肌と肩につかない位に切りそろえられた髪。サバサバした性格の風月に初めて会った嵐ちゃんはすぐに仲良くなった。
かなりハイペースでボトルを空けていく十六弥くん達の前には、まだ飲み始めて30分程だと言うのに三本目の空き瓶が出来ている。
「お前らもちょっとこっち来いよ」
ちょいちょいっと手招きされるままに大人達の方へと近づく。すると十六弥くんが何処からか大量の500円玉とトランプを取り出しテーブルに置いた。
「今から俺主催、ホームカジノを開催する」
これは宴会の時によく十六弥くんが行う遊び。今回はチップの代わりはこの用意された大量の500円玉で、それぞれ初めに60枚、30000円を手持ちでスタートする。その後は普通のカジノと同じでゲーム毎にチップを賭けて勝負し、最後に手元に残ったチップがそのまま小遣いとして貰えるというゲーム。つまり十六弥くんがみんなに小遣いをあげるが、金額はお前らの実力次第だぞっていうこと。
「勝負は10回、今回のゲームはブラックジャック」
ブラックジャックとは、持ちカードの数字を21に近づけるというカードゲーム。21を超えると負けで21ジャストが一番強い。Aは1or11として数え、2〜10はそのまま、絵札は全て10として数える。
まずは配られたチップの中からそれぞれが思い思いにベットする。ディーラー役の十六弥くんがそれぞれにカードを表向きに二枚、自分には一枚を表で一枚は裏で配る。
俺のカードは5と7の12。初めにベットした金額はチップ10枚の5000円。十六弥くんのアップカードは8。嵐ちゃんと風月は18と9という数字。ここは、
「ヒット」
「私も」
「嵐太郎は?」
「スタンド」
十六弥くんは俺と風月へとカードを配る。そして出たカードはというと風月がJで俺が、9。
「ブラックジャック」
俺の手元にあるカードの合計は21、ブラックジャックの完成だ。俺のカードを確認した十六弥くんが自分のカードを裏返す。
「19」
「よっしゃ!」
「相変わらずレイラの引きの強さは健在なのね」
実は俺、このホームカジノで殆ど負けたことが無い。なので毎回もらう小遣いも10万は軽く稼いでたりする。
その後も順調に持ち金を増やし続け10回目の勝負が終わる時には手持ちのチップは216枚。今回も10万を超えたことに満足だ。嵐ちゃんと風月もそれぞれ5万を超える金額を手元に残してのゲーム終了となった。何だかんだ十六弥くんはこういう時は態と手を抜いて俺達に勝たせてくれる。というか、十六弥くんが本気を出すと小遣いなんて貰えない。強すぎるから。
「じゃあ、次は俺主催の王様ゲーム」
そう言い亜津弥くんが王様ゲーム用のくじを用意し始める。何故か高確率で王様を引き当てる十六弥くん亜津弥くん玲弥ちゃん。この三人の出す命令は9割が下ネタだ。今も王様を引き当てた玲弥ちゃんが立ち上がり、周りを見定めるように見渡すと、
「よし男共、みんな脱げ!!」
高笑いする玲弥ちゃんの命令で風月以外の俺達五人はパンツ一枚の姿になる。一気に部屋の肌色が増えた。裸のまま堂々と足を組んでソファに座る十六弥くんが王様を引く。すると俺の顔を凝視するとニヤリといやらしく口角を上げ、
「2番は王様に酒を口移し」
「!!」
2番、お れ だ !!
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