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挨拶は大切だよ?
「またすぐ会いに来るからね〜いい子にしてるんだよティノ〜」
「心配しなくてもティノはレイラよりいい子だよ」
「・・・風月意地悪だ」
冗談だよ、そう笑う風月にティノを渡す。普段からよく本家に帰っている風月はティノの面倒を見てくれている一人だ。明日からは授業があるので学園に戻らなくてはいけない。名残惜しいけどティノとは暫しのお別れだ。
「十六弥くんもまたね〜カレンちゃんにもよろしく〜」
「あぁ、風邪ひくなよ」
十六弥くんの大きな体に抱きついて別れのキスをする。ちなみに昨日の宴会のようなキスではなくて、軽い挨拶のもの。普段から十六弥くんとあんなキスはしないので思い出すと少し恥ずかしい。
「嵐太郎も元気でな」
「はい」
「じゃあ、ほら」
「はい?」
自分に向かって手を広げる十六弥くんに嵐ちゃんが困惑した表情を浮かべる。何を求められているかわかってないみたい。
「嵐ちゃん別れの挨拶だよ」
「早く来いよ」
「え、いや、俺は遠慮しときます」
折角何をしたらいいか教えてあげたのに更に困惑した様子の嵐ちゃん。にやにやしながら目を逸らさない十六弥くんに珍しく顔が引きつっている。
「昨日は自分からしてきたのに」
「・・・は?」
「ま、あん時は無意識っぽかったけどな」
あんぐりと口を開けて固まった嵐ちゃん。どうやら昨日のキスは本当に無意識でやったみたい。酒の力って怖い。とりあえずこのままじゃ埒が明かないので、にやにやとし続けている十六弥くんの所に嵐ちゃんを無理矢理連れて行く。
「嵐太郎、お前はもう俺の家族だろ?」
「嵐ちゃん照れてちゃダメだよ!」
照れてるんじゃねぇよと言う視線はスルーして背中を押す。抵抗するように踏ん張っていたけど、十六弥くんにもう一度名前を呼ばれ諦めたのか、本当に軽く一瞬だけ口を合わせて離れる。それでも満足したのか顔を逸らす嵐ちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる十六弥くん。
そのままちょっと気まづそうな嵐ちゃんと二人で車に乗り込んだ。帰りは常磐家の運転手の一人、小太郎が学園まで送ってくれる。
入寮の時とは違い、今回は無事に正門に送り届けられた。成長したな小太郎。
「・・・疲れたな」
「ははっ」
寮の部屋に着いて嵐ちゃんが零した言葉に思わず笑う。そんなに十六弥くんにキスするのが嫌だったのかな。ちょっと十六弥くんが可哀想。
「嫌というか、俺は元々挨拶でキスする習慣がねぇんだよ」
まあ日本はそうかもしれないけど。俺には付き合う前からキスしてきたのに。本当に嵐ちゃんは俺のことが好きだなぁ。
「そんな嵐ちゃんにお知らせ」
「なんだ」
「別に挨拶って言っても口にキスしなくても良かったんだよ」
「・・・はぁあ!?」
まあいっつも俺がそうしてるのを見てたから勘違いしたんだろうけど。常磐家の中でも口にキスするのはぶっちゃけ元々スキンシップが激しい俺達兄弟と、ブラコンの騎麻くらいだったりする。他の家族同士は基本的に口じゃなくて頬っぺた。テンションが上がったり感極まったりすると口にすることもあるけど。十六弥くん達兄弟はハグまでしかしない。しかもその理由は、
「子供の時ならまだしも流石に190超えの野郎同士でキスはビジュアル的にアウトだろって」
「それなら俺もアウトだろ・・・」
いやいや十六弥くんからしたら嵐ちゃんはまだ子供の括りだから。まあ、それでも日本育ちで習慣の違いもあるから、次はハグで十分十六弥くんは満足してくれると思うよ。そう伝えると長い溜息を吐いてソファに倒れ込む嵐ちゃん。
俺はあんま気にしてこなかったけど、意外と文化の違いって大変なのかな?嵐ちゃんの珍しい姿を見ながらそんな事を何となく思った。
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