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消えた靴下
体育祭が終わって一週間程が経った。大分肌寒くなってきたので、俺はもうセーターが手離せない。本当はそろそろブレザーを着ても良いくらいの気持ちだけど、これからもっと寒くなることを考えて我慢してる。
「こんなに寒いのに外で体育とかみんなおかしい・・・」
「まだそんなに寒くなかっただろ」
「10月でそんなこと言ってたら冬が大変だなー」
昼休みが終わりただでさえ満腹で眠いのに、5限目は外での体育という鬼の時間割だった。寒さなんか気にした様子のない要と凌だけど、俺は一刻も早く教室に戻って暖まりたい。
学園内に入れば空調のおかげで寒さも少し収まる。それでも元々の体温の低い俺からしたらもう少し温度を上げて欲しいんだけど、要達にはこれくらいが丁度いいらしい。やっぱり俺は寒がりなんだろう。
教室に戻り制服に着替えようとしたしたところでふと違和感に気付く。体操着に着替えた際に脱いで畳んでおいた(脱ぎ散らかすと要が怒る)制服の山が若干崩れていた。几帳面では無いけどそれなりには整えていたと思うんだけどな。
ま、誰かが机にぶつかってズレただけだろうと思い気にせず制服を手に取った。すると、
「あれ?」
「どうした」
「・・・これ」
制服の下から出てきた物を要に見せる。
「・・・ジェ〇ピケ?」
元々履いていたはずの黒い靴下が何故か白くて暖かそうなもこもこの靴下へと変化した。なぜ。しかも探してみてもそれ以外の靴下が見つからない。
「だからレイラ君そんな可愛い靴下履いてるの」
「裸足は寒いし汚れた靴下履いてるのも嫌だから」
授業が終わり凌にも靴下が無くなったことを話した。どうでもいいけどこのもこもこの靴下は予想よりも履き心地が良い。柔らかく包まれる感じ。ただ分厚くてちょっとシューズがいつもよりきつい。それにしても俺の履いていたはずの靴下はいったい今何処にあるんだ。
「他に無くなったものとか無いのか?」
「iPhoneとか財布はロッカー入れてたし他の物は無事かな」
基本的に私物は鍵付きのロッカーに入れていて、殆ど手ぶらで登校するので机の中にもペンケースくらいしか入っていない。それらには特に被害は無かった。
「レイラ君のファンとかかな・・・」
「こいつって変態に好かれそうだもんな」
「何それ嬉しくない」
確かにこの学園に来てすぐに保健室で変態に襲われたけど・・・。たまに食堂とか移動教室とかで人混みに紛れて、セクハラ的に接触してくる奴も居たりする。学園内で一人にならないようにしているので頻度は少ないけど、それでも少しでも一人になると知らない人に毎回声を掛けられているのは確かだ。
え、俺って本当に変態に好かれているんじゃないか。
「まあ今のとこ靴下以外に特に何も起こってないし、一旦様子見ってことで!」
「・・・レイラ君がそう言うならそうするけど、何かあったらすぐ言ってね?」
何かあってからじゃ遅せぇよと要に突っ込まれたけど、これくらいで余り騒ぐのもなぁ。確かに私物が無くなるのは気持ち悪いけど、代わりの靴下が置かれていた事で何だか軽い悪戯の様な気もする。とりあえず嵐ちゃんや騎麻達には言っておこう。多分言わないと後でバレた時に怒られるし。
案の定心配した様子を見せた嵐ちゃん達だけど、やっぱり俺と同じく一旦は様子見ということになった。ちなみに靴下は犯人の手がかりになるかもということで、騎麻に没収されこのくんに渡されたらしい。ちょっと履き心地を気に入っていたので残念。
今度嵐ちゃんとお揃いのもこもこ靴下を買おうとこっそり心に決めた。
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