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うさちゃん珍事件
「こいつ知り合いか?」
「ん〜見たことないかな」
いつもより早い時間に登校した俺と嵐ちゃんは一緒に1-Sの教室に向かった。そしてそこには既に一人の生徒の姿が。その生徒は俺の机を漁っていた。現行犯か。
昨日俺が仕掛けておいたのはGPSを隠した私物を敢えて机の中に残して帰るという、かなり簡易的な仕掛けだった。昨日のカフェテリアであっきー達と話している時に、
『あ、机の中にペンケース忘れた』
と、会話の中で軽く言いわしたが、それだけ。それもどのくらいの距離にいるかもわからない犯人に、聞こえてればいいな〜くらいの感覚だった。それなのに、
「うぅーー」
目の前には小学生と言われても信じそうなほど小柄な生徒が一人。その手には昨日俺が置いて帰ったペンケース、というよりもそれに付けているストラップを握りしめた状態で、こちらを恐る恐るといった感じに見つめている。
「こいつが犯人みたいだな」
「そうみたいだね」
普段ならまだ殆どの生徒が登校していない時間に、いきなり現れた俺達に驚いて逃げるタイミングを失ったようだ。ぶっちゃけこんなにあっさり見つけれると思っていなかったので、見つけた後のことを考えていなかった。
おどおどして特に逃げる様子が無いので、とりあえず騎麻とこのくんに連絡しようとポケットからiPhoneを取り出す。すると、
「れ、れいらちゃん!」
「!」
急に声をかけてきたことに驚く。すぐ目の前まで近づいてきた犯人に一瞬警戒した俺達だけど、その発された声の高さと俺の胸元くらいまでしかない身長にすぐに警戒が緩む。小さい。多分160cmもないんじゃないだろうか。
「れいらちゃんは、うさちゃん好き?」
「・・・え?」
先程までのおどおどした様子から一変、何故かキラキラとした瞳でこちらを見つめてくるちびっ子。その質問の意図がわからずに困惑している俺に、手に持ったペンケースを掲げながらまた同じ質問が繰り返された。
「うさちゃんて・・・あ、それのこと?」
「そう!レオラビット!!」
レオラビットとは確か俺のペンケースに付いているストラップのキャラクター名だったはず。ライオンのような鬣のある白いうさぎがモチーフのキャラクターだ。若者を中心に日本で人気のブランドのキャラクターらしく、このストラップは前に要や凌と街に遊びに出掛けた時にゲーセンで取ったもの。
しかしレオラビットが好きかと言われると、特に好きでも嫌いでもない。可愛いとは思うからストラップは使っているけど、別に集めたりする程ではない。そう伝えるとちびっ子のキラキラさせていた表情が、一瞬でガビーンと効果音がつきそうな程見るからに曇った。
「れいらちゃん、うさちゃんみたいに白いし可愛いから、」
「まぁ確かに白いけど」
「それにっ体育祭の時に副会長のこと可愛いって!」
急に響ちゃんが出てきた。響ちゃんはどちらかと言うと可愛いよりもかっこいい。ちびっ子が何を言おうとしているのか、どうにか思い出そうとする。体育祭の時・・・・・・あ!
「仮装障害物レースの時、うさぎの着ぐるみ着た響ちゃんのこと可愛いって言った!!」
確かに言った。だって普段ほんわかしていて、それでいてかっこいい響ちゃんの着ぐるみ姿だ。可愛いじゃないか。
「だから、れいらちゃんもうさちゃん好きなんだと思って、」
ちびっ子の言い分を聞くと、元々俺のことをうさちゃんみたいで可愛いと思っていたらしい。しかし普段の俺は見た目はともかく、身につける物の殆どが黒でうさちゃんとは真逆。だからうさちゃんには興味ないんだな・・・と、残念に思っていた。それなのに体育祭の時の発言を聞いて、俺は実はうさちゃん好きなのでは!と思ったんだとか。
・・・ちょっと考えが飛躍し過ぎている。
それでもこのちびっ子は本気でそう思ったらしい。そして、俺の持ち物をちょっとずつ白く変えていくことで、実は(?)うさちゃん好きの俺は喜び、自分も更に(?)可愛くなった俺を見れると思ったんだとか。
それが俺の私物を白いもこもこした物へと交換されていた珍事件の真相、らしい。
まぢかよ。
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