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ガラッ
「レイラ!怪我したって・・・大丈夫か!?」
保健室のドアが開くと同時に入ってきた騎麻と嵐ちゃん。あまりの形相に思わずビクッと肩を震わせる。
「君達はもう少し静かに入ってくることは出来ないのかい?」
「嵐ちゃ〜ん騎麻〜」
保健医に怒られているのも気にせずこちらに近付いて来る二人。そんな俺はというと、上半身裸の状態で背中と肘に大量の湿布と包帯が巻かれている。
「背中が打撲で左肘はヒビだってー」
「勢いよく倒れ込んだけど頭は打っていなかったのが幸いというか・・・。この怪我だと暫くは色々と不便だろうから、同室の結城君も色々助けてあげてね」
「はい」
結局落ちてくるあおちゃんを受け止めてそのまま床に倒れ込んだ俺は、背中の広範囲を打撲と打ち付けた左肘にヒビが入るという怪我をした。それでもあの高さからあおちゃんが落下していたら、もっと大きな怪我になっていたはずなのでヒビくらいで済んだのはラッキーだと思う。
「ったく、あんま無茶なことするなよな」
そう言う嵐ちゃんに頭を撫でられる。二人ともかなり心配してくれているのが伝わり申し訳ないけど、無茶をしなかったらきっとあおちゃんが大変なことになっていた。
しかし文化祭の準備で忙しいこのタイミングで怪我をしてしまったのはなかなかの痛手だ。ヒビなので大人しくしていれは当日までにはギブスは外れるかもしれないけど、準備ではあまり役に立てそうにはない。
「れいらちゃんごめんね・・・」
「あおちゃんは別に悪くないじゃん」
実はさっきからずっと俺の足元にはあおちゃんが張り付いている。俺が怪我をしたのが自分のせいだと思ってかなり落ち込んでいるけど、今回のことはぶつかった生徒の不注意だ。それに怪我も無く無事だったとは言え階段から落ちたあおちゃんもかなり怖かったはず。そんなに落ち込む必要はないのに。
「俺別に謝って欲しくて助けたんじゃないよ?」
「うん・・・れいらちゃんありがとう」
怪我に触れないように控えめに抱き着いてきたあおちゃんの柔らかい髪を撫でる。うんうん。こういう時は謝られるよりもお礼を言われた方が良い。何より無事で良かった。
「とりあえずさっき教室から荷物は持ってきて貰ったから、今日はこのまま寮に帰って大人しくしてなさい」
「は〜い」
一緒に帰るという嵐ちゃんと保健室を出る。殆ど中身の入っていない軽いカバンも嵐ちゃんが持ってくれ、俺は手ぶらの状態で歩いていく。
「痛むか?」
「泣くの我慢出来たのが奇跡」
みんなの前では我慢していたけど、俺は元々痛みがかなり苦手だ。ピアスを開けた時は号泣だったし、注射なんかも毎回十六弥くん達に押さえつけられて無理矢理やられる。背中の打撲は少しでも体を捻ると激痛が走るし、左肘は腫れて圧迫されているので鈍痛が止まらない。
手当てを受けている間も患部に触れる度にやってくる激痛に、心の中でずっと絶叫しっ放しだった。それでも、泣きそうな顔をして側で見ているあおちゃんに、更に心配させないためにと全力で我慢した。
念の為にと貰った痛み止めをすぐにでも飲みたかったのに、変な強がりのせいでそれも叶わなかった。
「ずっと金槌で背中と肘を殴られてる気持ち」
「・・・そりゃ痛いな」
だから本当に痛いんだってば。
いつもよりも時間をかけてゆっくりと歩きながら寮に戻り、嵐ちゃんの助けを借りてどうにか着替えや風呂を済ませることに成功した。途中何度か不意に襲ってきた痛みに耐えつつ、痛み止めの有難さを感じる。
それにしても、俺はどうやって寝ればいいんだろう・・・。
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