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いよいよスタート!
「じゃあ、13時に迎えにいくから」
「またね」
とうとうやってきた文化祭当日。二日間行われる文化祭の初日は学園内の生徒だけの参加で、初等部や中等部の生徒も遊びに来るらしい。
休憩時間がたまたま被っていた嵐ちゃんと、一緒に校内を回る約束をしてそれぞれの教室に向かう。
「・・・」
文化祭開始は一時間後。俺は更衣室兼荷物置き場として用意された教室内で、昨日始めて見た衣装を目の前に睨めっこ。
「教室で最終の流れの確認もするから出来るだけ早く着替えて集合してくれよー!」
「はーい」
様子を見に来た迅に返事をしながら、周りの生徒に遅れないように衣装へと手を伸ばす。俺の隣では初めはあんなにウェイターになった事を拗ねていた要が、諦めがついたのかさっさと用意された衣装へと着替え終わろうとしていた。
その衣装は某映画をモデルにしたようなワイルドな海賊の姿で、要の男らしい雰囲気にも合っていて様になっている。
更にその隣では狼男に扮した凌の姿が。茶色に耳と同じ色のふさふさの尻尾が背後で揺れている。ただ、元々の人懐っこい雰囲気のせいか、狼というよりも犬っぽい。
そして俺はというとーー、
かなりピタッとした素材のやたら丈の短いトップスに、少しでもズレると下半身を露出してしまいそうな程ローライズのゆったりしたパンツ。全体的にギラギラとした装飾品で飾り付けられた俺の衣装は、"踊り子"。
「ぅう、絶対腹壊す・・・」
空調で程よい温度に保たれているとは言っても、なんでこんなにがっつり腹の開いた衣装・・・。ただでさえ寒がりの俺にとっては、ちょっと防御力が足りないんじゃないかな!?
「ペラッペラのくせに腹筋は相変わらず綺麗に割れてるな」
「うひゃっ」
要に露出している腹を鷲掴みにする様に触られ驚きに変な声が出た。そのまま遠慮の無い要は俺の腹をぺたぺたと触り続ける。そんなに俺に筋肉が有るのが不思議か。それにしても、
「もう!!二人共何でいきなりイチャつき出したの!?!?超萌えるんだけど!!!!」
「いや、良い筋肉してるからつい」
「要の手温かい〜」
普段あまりベタベタ触ってくるタイプじゃない要の行動に凌が壊れた。別にイチャついてたつもりは無いけど、本当に要の手が温かくて冷えた腹に心地よい。出来れば定期的に温めに来てくれないかな。
「ほらほら〜、ウェイターも段取りの確認するから集合しろよ〜」
着替え終わってもなかなか集合しない俺達を呼びに迅が再度現れた。ごめんごめん、すっかり忘れてた。
「あと15分で文化祭一日目が開始する。案内係は出来るだけ席に無駄なスペースが出ないようにご案内、調理係はスムーズさと材料の在庫を随時意識、ウェイターはひたすら愛想を振り撒け!以上!!!」
かなりざっくりした迅の説明で最終確認は終わった。それでも今日まで何回もシュミレーションを繰り返しているので問題は無いだろう。
今日のためにガラリと内装の変わった教室内は、パッと見は完全に街にあるようなカフェになっている。いつも俺達が授業を受けるために使っている机や椅子の代わりに、木製のシンプルだけどスタイリッシュなテーブルとチェアが並ぶ。
ただ、そこにいるのが踊り子や海賊に狼男、ドラキュラ、執事にメイドにポリスに侍に・・・。ごちゃ混ぜの世界観が存在するせいで、店内の内装のお洒落さが逆にシュールだ。
ちなみに案内係は何故か囚人の格好で、調理係は水兵さんの格好をしている。
なぜ。
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