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ここはメイド喫茶ではないよね・・・?
「ねぇ、レイラちゃんの衣装ヤバくない?」
「あの腰からのラインが・・・」
「「「えろい」」」
そんな会話がどこからか聞こえてくるのを聞き流しながら料理を運ぶ。文化祭が開始して一時間。1-Sには俺が予想していたよりも遥かに多い人数の客が来ていた。教室内に入り切らないので廊下には順番待ちの列まで出来ている。
「次、三名ご案内します!」
『いらっしゃいませ!』
次から次にやって来る客に店内の入れ替わりも激しい。優秀クラスを狙っている俺達としては有難い。ただ、問題が一つ。
「あのっ!サンドイッチとオレンジジュースと、あと・・・チェキお願いします!レイラ君指名で!!」
そう、メニュー表の最後に書かれた"チェキ撮影 1枚500円"。喫茶店にそんなメニューがあっていいのか。ここはメイド喫茶では無いぞ。・・・いや、似たようなものか?
ウェイターの仕事に加え、殆どの客から注文されるチェキ撮影の大半が俺指名のせいで、俺、超忙しいんだけど!!
「レイラ、これ4番テーブルに持って行ってくれ」
「ぅは〜い」
チェキを連続で5枚撮り終えると、調理係の生徒からすぐに注文された料理を渡される。早く休憩時間来ないかな。
「4番4番っと・・・って、あ!」
「やっほ、レイラ」
「真斗久しぶり〜!」
注文を受けた4番のテーブルに座っていたのはまさかの真斗だった。今日は中等部の生徒も遊びに来ているし、真斗から遊びに行くと連絡も貰っていたけど、こんなに早い時間に来るとは思っていなかった。
「凄い!鴇君に見せてもらった写真よりも生のレイラ君の方が綺麗!!」
急に真斗の横に座っていた生徒が大きな声を出したことに驚いて真斗から視線を移す。すると、その生徒の顔を見て更に驚いた。
「え、のいちゃん!?」
「はーい、山野井鴇君の弟の山野井鷹君でーす!」
「弟!めっちゃ似てる!!」
よく言われまーす!と元気に答える鷹の顔は本当にのいちゃんに似ている。身長はのいちゃん程高くないけど、残念ながら俺よりは高そうだ。
「鷹とは同じクラスなんだけど、こいつレイラのファンらしくて真っ先にここに行くって煩くてさ」
「いや〜、前に父さんが撮影した写真見てからどうしても生のレイラ君に会いたくて!」
写真とは夏休みにのいちゃんのパパのスタジオで撮った写真のことだろうか。クールなのいちゃんとは違って表情のくるくる変わる鷹は、なんだか"弟"って感じで可愛い。
「それにしてもレイラ君随分エロい格好ですね!俺とこの後エロいことしませんか?」
「え」
「レイラ君絶対エッチな事好きですよね?俺割りと自信あるんですけど・・・」
「鷹!!」
急に腰を引き寄せられ顔を近付けてきた鷹の頭を真斗が思い切り殴る。今、凄い音がしたぞ。それにしても、前言撤回。こいつ可愛くなんか無い。
その後席を離れた俺の隙を見つけては俺を呼び寄せセクハラ発言をする鷹に、見兼ねた真斗が注文した料理を一気に掻き込み、引きずるように教室を出ていった。普段クールな真斗の声を荒げる姿はなかなかレアだった。
「レイちゃん、一旦裏で少し休憩してきていーよ。疲れたでしょ?」
「ゆっきーありがとう〜」
注文が途切れた少しの隙を見てゆっきーが声を掛けてくれる。もうすぐ昼の時間で混むことが予想出来るので、休むなら今がチャンスだろう。要は休憩時間中で、凌は部活の当番の時間でさっき慌てて教室を飛び出して行った。
調理係が料理をしている横にある、ちょっとした休憩のために用意された椅子に腰を下ろす。動き回っている間は平気だったけど、こうして座っていると少し寒い。
「大ちゃん、なんか温かい飲み物ちょーだい」
「ココアでいいか?」
「うん」
調理係の大ちゃんにお願いするとすぐに温かいココアを用意してくれた。しかも猫舌なのを知っているので、少し温めのすぐにでも飲める温度という優しさ。休憩まであと二時間。頑張ろう。
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