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苦手なものくらい誰でもあるでしょ?

「疲れた・・・」 昼時の盛り上がりは凄かった。全く休む間もなく怒涛の二時間が過ぎていった。 「おつかれ〜休憩行っていいぞ」 「ありがと〜」 と言っても嵐ちゃんが教室まで迎えに来てくれるので、また調理場の横の椅子で一休み。宣伝を兼ねて休憩時間中も着替えちゃ駄目らしいけど、流石に腹を全開で校内を歩き回るのは無理だ。風邪ひく。 それが分かっていた迅により休憩時間様に用意されていた衣装に合わせた上着を貰った。ぶっちゃけ上着があるなら最初から欲しかった。俺は寒いのが苦手なんだぞ。 「レイラ」 呼ばれた方へ顔を上げるとそこには紺色の着物姿の嵐ちゃんが。 え、かっこいい。 「Japanese SAMURAI!!!」 「急に外国人に戻ったな」 元々外国人だから!ちょっとだけ日本の血も入っているけど、俺の見た目に日本人の要素は0に近い。そんなことより! 「嵐ちゃん着物似合う!かっこいい!!侍!!」 「お前はやたら露出して営業してるって話が俺らのとこまできてたぞ」 「そぉ〜超寒いんだよ〜」 嵐ちゃんと共に校内を歩いて行く。いつもと違う雰囲気と見慣れない中等部や初等部の生徒の姿に、何だか違う場所に来たような気持ちになる。 どこから回るか迷った俺達はまず、腹ごしらえをすることにした。教室での飲食系の店はどこも食べるまでに時間がかかりそうなので、部活動の出店が集まっているグラウンド横へと向かう。 「たこ焼き二つ」 「あ、レイラ君達来てくれたんだ!」 そこには狼男の姿のままたこ焼きを焼いている凌がいた。料理が得意な凌はサッカー部では大事な調理担当らしい。 「熱いから気をつけてね!」 「冷めてから食べるから大丈夫」 「いや、そこは温かいうちには食べてほしいな!?」 熱い方が美味しかったとしても、食べれないんだから仕方ない。凌から受け取った熱々のたこ焼きを持ったまま、他の出店を覗きながら歩く。途中で焼きそばやフランクフルト、ケバブを買って食べ頃になったたこ焼きから順番に食べる。うん、美味しい。 「あ、ここ行ってみたい」 胃が満たされたのでまたぶらぶらと校内を回っていると、見つけたのはお化け屋敷の看板。何人か人が並んでいるけど、そんなに待たなそうなので最後尾に並んでみることにした。 「お前、肝試しの時みたいなことにならないか?」 「大丈夫!嵐ちゃん一緒だし!」 俺の顔をのぞき込みながら聞いてくる嵐ちゃんに笑顔で答える。肝試しの時のことは、まあ、ちょっと、忘れてほしい。 「暗いのでゆっくり進んで下さいね」 入り口にいた受付係から軽く説明を受けた後、暗い室内へと入る。言われた通り中は暗く、細かく区切られている細い通路は、暖房が付いていないのか肌寒い。 うっすらとしか見えない通路をゆっくりと進んでいると少し離れた所から悲鳴が聞こえた。この先が脅かされるポイントなのかな。そう思った瞬間背後に何か気配を感じ、振り向いた。すると・・・ 「っっっつ!!」 血だらけの生徒が真後ろに立っていた。驚きに声も出さずに固まった俺に気付いた嵐ちゃんが俺の手を引いて歩く。 「目閉じとけ」 そう言う嵐ちゃんの言葉のままに目を閉じた俺の耳を、後ろから嵐ちゃんが両手で塞ぐ。そのままの状態で、嵐ちゃんの手によって方向転換をされながら出口まで目を閉じて歩いた。 「俺、もしかして怖いの苦手かも・・・」 「そうだな、今度からは自己紹介でもそう言っとけ」

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