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明日に備えて
「やっと終わった〜!」
残りの二時間は客足は失速するかと思っていたのに、最後の最後まで1-Sの教室の前は列が途切れることは無かった。売上もなかなか良かったみたいで、迅が満足そうな表情でお金を数えている。
明日は一般公開の日なので、今日とは違った客層になる。生徒の保護者もいれば、無関係の一般客も来るらしい。そして厄介なのがその一般客で、
「一般客の中にはこの文化祭を、金持ちとの出会いの場か何かと勘違いしてる者もいる。捕まったらなかなか解放してもらえない・・・ので!まず捕まるな!笑顔で逃げろ!!」
・・・すごいな。金持ちが通う学校として有名な天羽学園の文化祭だ。確かにどうにか学園の生徒に近づき仲良くなりたい、という人もいるだろうけど。
ちなみに明日は特定のお客に捕まりにくくするため、チェキの指名は不可。くじを引いてもらいランダムに撮影相手を決めるらしい。俺的には今日の忙しさを体験しているのでかなり有難いけど、要は全力で嫌がっていた。
そしてもう一つ明日は今日と違うところがある。それは、
「じゃあレイラは明日、こっちの衣装な」
衣装係から渡された紙袋を受け取る。明日は俺だけ衣装が違うのだ。今日の布面積の少ない衣装とは違い、明日着るものはしっかり全身守られている。
何故俺だけ衣装チェンジがあるかというと、このくんから、つまりは風紀の指示らしい。学園の生徒だけの今日はみんな俺の事を知っているし、TOKIWAのことも理解している。でも、明日はそうじゃない。少しでも変な奴に絡まれないように"露出禁止令"が出されているとか。
・・・まるで俺が露出狂みたいじゃないか。
それでも日本に来てから海外にいた時よりも、見た目で目立ち絡まれる数が多いのは確かだ。しかも、最近俺は日常的スペックとして"色気"が出てきたらしい。いやまぢで。
おかげで前よりも更に俺の周りにいる保護者属性の人達からの、周囲へのガードが強くなっていた。俺としても以前に保健室で襲われて以来、知らない人間への警戒は怠っていない。
「つか、明日だけじゃなくて今日も露出控えて欲しかったなー」
「馬鹿言え!明日を補うためにも今日は脱いどかなきゃだろ!!」
「いや何言ってんの」
迅のテンションについていけない。11月に腹を出して過ごさせられる俺の気持ちを考えてくれ。
「だから明日は今日と違う衣装なんだよ」
「何の衣装なんだ?」
「それは明日のお楽しみ!」
夕飯を終えた後はソファでのまったりタイム。嵐ちゃんの入れてくれるカフェオレは今日も絶好調に美味しい。
「嵐ちゃん明日玉の輿狙いのお姉さんに捕まらないでね」
「そんなん興味ねぇよ」
嵐ちゃんは興味無くても向こうは興味有りまくりだから。しかも着物姿の破壊力はやばい。まあ、嵐ちゃんなら上手くかわすんだろうから心配はしてないけど。
「お前こそ今日何かやっただろ。見回り中の風紀が1-Sから悲鳴が聞こえたって言ってたぞ」
頭を撫でながらちょっと呆れ顔の嵐ちゃん。えー、何でそれで俺を疑うのさ。ま、やったけどさ。
「いや、お触り禁止令を守らない奴にセンブリ茶振舞ってただけだけど」
可愛いお仕置きでしょ?実は面倒な客用にいくつか裏メニューを用意してある。その一つがセンブリ茶。ちなみに俺的にはゴーヤスムージーの方がやばめ。飲んだ後も喉にへばりつく。
「ちなみにのいちゃんの弟の鷹にもご馳走様した」
「・・・ああ、あいつならゴーヤの方だろ」
必死に止めてくれてる真斗の努力を認めてのセンブリ茶チョイスだよ。そういや折角久々に真斗に会ったのに全然話が出来なかった。やっぱりゴーヤスムージーを飲ませるべきだったか・・・。
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