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文化祭二日目
「レイラ、6番の注文聞いてきて!」
「はいはーい」
6番テーブルには大学生くらいの女の子が二人。いつもは男しかいない空間に女の子がいるのはなんだか見慣れない。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ、はい・・・」
「え・・・」
お喋りに夢中だった二人に声をかける。すると二人は俺を見た瞬間、固まった。ん〜この反応をされるのは既に6組目。別にメドゥーサのコスプレをしているわけじゃないのにな。
「王子様・・・」
そう、今日の俺は全体的に白を基調とした凝った金の刺繍の入った衣装を着ていて、王冠こそ被っていないけど、どっからどう見ても"王子様"スタイル。確実に白馬に乗っている。イメージだけど。
「ガトーショコラとチーズケーキはオススメですよ?」
「っ!じゃあ私ガトーショコラで!」
「私はチーズケーキを!」
なかなか注文を言わない二人に俺のオススメを言うと、我に帰ったようにそれを注文した。了解の意味を込めて軽く微笑みかけるとみるみるうちに真っ赤になってしまった。かわいいね。調理係の元へ注文を伝えに戻る後ろからは、さっきの二人のキャーキャー騒ぐ声が小さく聞こえてくる。うんうん、顔だけは本当に良いよね俺。
「レイラ君いつもより眩しい、王子様オーラが半端ない」
「今日はキャラもしっかり作っていこうと思って」
今日も相変わらず柴犬のような狼男の凌。さっきお客から"ポチくん"と呼ばれていたのが聞こえた時は思わず吹き出してしまった。
昨日はいつもの喋り方のまま接客していたけど、今日は優雅で気品溢れる王子様を演出中。ほら、折角ならなりきった方が楽しいじゃん?
ちなみに昨日の踊り子はキャラが分からなかったから、とりあえず普段よりリズミカルに動いてみた。多分ちょっと違ったと思う。
ついでにいくと要は全く笑顔のない接客で、無愛想で雑な感じが逆にクールだと騒がれていたりする。本人は嫌そうだけど面白い。
「なんか廊下の方騒がしくない?」
誰かが呟いた声が聞こえ、確かに何だか廊下が騒がしい気がする。まあ、賑やかな文化祭の最中だし、みんなテンションが上がっているんだろう。
と、思っていたらー、
「れ、レイラっ」
何だか焦った様子の案内係が近づいてきた。なんだなんだ?
「Hi!レイラ!」
「元気そうだね」
「ぇえっ!なんで二人がいるの!!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれ振り返ると、まさかのまさか、カエラとサハラの姿が!来るなんて一言も言ってなかったのに!驚きと久々に会う嬉しさで二人に抱き着く。
「レイラが三人!?」
「王子様がいっぱい・・・」
「え、え!?」
そして俺以上に驚いた様子の教室内。そういや学園内でも俺が三つ子なのを知っているのは、夏休みに別荘に行ったメンバーだけだっけ?
「わわ、びっくりした〜」
「また急に現れたな・・・」
二人のことを知っている要と凌が近づいてきた。そういえば別荘にも前触れも無く乗り込んできたな~。まぁ、あれは9割十六弥くんが言い出しっぺだろうけど。
「お!要と凌もいるじゃん!」
「二人も久しぶりだね」
二人の登場で騒がしくなった教室内だけど、空いた席に一旦二人を座らせ営業を再開する。それでもみんなの視線が俺とカエラ、サハラをチラチラと行ったり来たりするのは止まらない。しかも、二人は二人で俺が接客する姿をニコニコしながら観察してくるので、なんだか落ち着かない。
「レイラレイラ、チョコレートパフェおかわり」
「俺もアイスコーヒー」
「またー?ちょっと待ってて〜」
さっきから何度も何度も追加注文を繰り返す二人。しかも毎回同じものを注文してくる。そんなに冷たいものばっかでお腹壊さないのかな。そう思いながらも料理担当のクラスメイトに、パフェとコーヒーを頼む。
「おいそこのブラコン。弟独占するの止めろ」
四度目の注文の品を運びに行くと、調度近くにいた要が呆れ顔で言う。それを聞いたカエラとサハラは特に気にした様子もなくニコニコ。
「だってレイラ可愛くない?王子様姿似合い過ぎ!」
「流石俺達の弟だな、何でも似合う」
いや〜知ってはいたけど二人とも俺のこと大好きだな〜。俺も二人のこと大好きだけど。そして要がさっきより呆れた顔をしている。そんな顔をしなくてもいいのに。
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