129 / 311
これぞわびさび
「じゃあ、休憩行ってくるねー!」
「おじゃましました〜っ」
「ご馳走様」
それから約一時間後の休憩時間になるまで、カエラ達は教室に居座った。売上のために回転率を気にしていた迅も、注文し続ける二人には文句は無く、むしろ俺達の噂を聞きつけ、客が増えて喜んでいた。現金な奴だ。
「何処行くか決まってんの?」
「嵐ちゃんのとこ!」
そう、今俺が向かっているのは2-Sの教室。俺が休憩になるのを待っていたカエラとサハラも、もちろん一緒にそこに向かう。
「嵐ちゃんのとこって騎麻もいるんだろ?」
「響ちゃんとこのくんもいるよ!」
「それは楽しみだな」
それにしても、さっきからすれ違う人達が全員、100%、みんな俺達を見て驚いた表情をする。それは天羽学園の生徒も一般客も同じで、唖然とした様子でガン見。ま、普段から一人で居ても目立つ白い髪に紫の目を持つ人間が、三人同じ顔で居たら仕方ない。俺達が揃うといつもこうだ。もう慣れた。
人混みを5分程歩いて着いた2-Sの教室。和モダンな雰囲気に飾り付けられ、同じ喫茶店でも1-Sとは印象が全然違う。
「わ、本当にカエラとサハラ来てる」
「騎麻!」
タイミングよく教室から顔を出した着物姿の騎麻が俺達を見つけて驚きを声にする。ただ、反応からして二人が文化祭に来ていることは知っていたみたい。折角驚かせようと思って連絡しなかったのに。
「来ちゃった!」
「騎麻も元気そうだね」
「元気元気!ほら、今調度席空いた所だから入りなよ!」
そう騎麻に案内されるままに中に入る。
「「「おぉー!!」」」
思わず声をあげる。中も教室の外と同様に和モダンなデザインで、これぞ"和"といった感じ。何より教室にいる2-Sの生徒だと思われる人がみんな着物姿!Japanese SAMURAI祭り!!
「なんだ、お前らも来てたのか」
「うわ!嵐ちゃん着物似合う!」
「また一段と色気が・・・」
入ってすぐの所にいた嵐ちゃんが俺達に気付き寄ってくる。俺は昨日も見てるけど、やっぱり嵐ちゃんは着物が似合う。カエラとサハラも似合う似合うと褒めている。
「あらら、可愛い子がいっぱいいるね」
「一年の階が騒がしかったのはお前らが原因か」
「「「響ちゃんこのくんやほ〜」」」
俺の癒しの響ちゃんは着物姿でも安定のマイナスイオン大放出。響ちゃんがいるだけできっと地球の二酸化炭素濃度が減っている。地球に優しいイケメン。イケメンは世界を救う。響ちゃん流石。
「いやいや何ナチュラルな対応してるの!?」
マイナスイオンを全身で感じていたら興奮気味ののまみちゃんと、何故か険しい顔ののいちゃんが現れた。のいちゃん、ちょっと顔が怖いんだけど。
「お前・・・、この顔が三人いるなんて聞いてないぞ」
・・・そういやのいちゃんは美形を口説くのが趣味だったっけ?カエラとサハラが顎を掴まれて正面から観察されているのを見て思い出した。俺も初対面の時されたされた。良かったね、二人ものいちゃんのお眼鏡にかなったようで。同じ顔だから当たり前といえば当たり前だけど。
「レイラ君が三つ子だったなんて知らなかった・・・。ていうか、三つ子とか初めて見た」
まみちゃんの言葉に賛同するように、周りの人達も物珍しそうにこちらを見てくる。まあ、俺も自分達以外の三つ子には会ったことないけどね。
「それにしても、文化祭なんて聞いたら絶対父さん達来ると思ったのに珍しいよな」
「いや、すっごい来たがってたよ」
騎麻が言う通り、俺も絶対十六弥くん達は今回も来ると思っていた。それがまさかのまさか、十六弥くんが風邪を引いて寝込んでいるらしい。しょっちゅう体調を崩す俺とは違って、常に元気な十六弥くん。家族みんなが風邪で寝込んでも一人だけ移らないタイプなのに。
「本当は気にしないで来るつもりだったみたいなんだけどね。十六弥君が負けるレベルのウイルスとか、一般人が感染したら死人が出そうって麻紀君に止められたらしい(笑)亜津弥君はその道連れ(笑)」
「麻紀くん十六弥くんのこと何だと思ってるの(笑)」
ともだちにシェアしよう!