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幕が上がりステージが開かれると、壇上にいる俺達の姿を見て驚きの声が上がる。まあ、発表されているスケジュールに俺達の出番なんて書いてなかったからね。何より王子様に着物に法被というチグハグな衣装なのも、みんなの動揺を誘っている気がするけど。 「みんなー!天羽学園文化祭、楽しんでますかー!!」 騎麻の呼び掛けにざわざわしていた体育館内から一斉に肯定する返事が上がった。学園の生徒はステージにいる学園のファンクラブ持ちのメンバーにテンションが上がり、一般客も顔の良い人間の登場に盛り上がりを見せている。 「ちょっとこの時間に予定していたバンドの到着が遅れているので、到着するまでの間、俺達がこの場を借りて即席バンドを披露しちゃいまーす!!」 ぶっちゃけ即席なんてどころじゃない。まだ音合わせも一度もしていない顔を知っているだけのメンバー。むしろ騎麻以外の三人が楽器を出来る事すらさっき知ったくらいだ。 それぞれが楽譜を見ながらの演奏になるので、少しのズレや間違いで一気に総崩れする恐れがある。しかも俺、ボーカル。用意された楽譜の曲が今流行りのものや、誰でも知っているような有名なものばかりだったので、毎日夜はテレビ三昧の俺も知っている曲がほとんどだった。が、 「俺が知ってるくらいだからみんなも知ってるってことだよね」 「ミスるとすぐバレるやつだな」 俺の呟きにすぐ側の騎麻が答えた。つまりそういうことだよね。知名度がある分間違えるとみんなにバレる。ま、即席バンドなんでそこは大目に見てもらおう!! 「1曲目はーーー・・・」 5曲目を歌い終わった時、ステージの横から実行委員がジェスチャーをしていることに気付いた。どうやら遅れていたバンドが到着したみたい。 「どうやら俺達の出番はここまでみたい!次はお待ちかねの"ーーー"!!!」 拍手や歓声の中俺達と入れ替わるようにステージに入ってきたのは、最近よくテレビで観る若手の五人組のバンドグループだった。 「緊張したーーーー!!!」 「みんなお疲れ〜」 なんとかやり切った。緊張と思いの外盛り上がったことによりアドレナリンがドバドバ。よく分からない高揚感に包まれて体が火照っている。 「みんな音とかぴったりで驚いたんだけど」 終わってみて思ったことは、騎麻達四人の演奏のレベルの高さがプロ並だった。しかもそれぞれが上手いのはもちろん、合わせ具合まで抜群。ぶっちゃけ今演奏しているバンドにも負けない腕前だ。 「実は俺達ね、中等部の時にも同じメンバーでバンド披露したことがあるんだよ」 「あの時は騎麻がボーカルもやっていたねー」 ということは俺以外は実力把握済だったのか。それでも中等部以来一緒に演奏したことが無かったらしいし、曲も初めてのものばかりだと言うからやっぱり凄い。 「てか、レイくんの歌の上手さの方が驚きなんだけど」 「ほんとほんと!音程もバッチリだし、むしろ本物より本物っぽいというか!」 安ちゃんとまみちゃんに褒められ、響ちゃんも同意するように笑顔を向けてくる。いやぁ〜照れちゃうな。実は俺、絶対音感があるから歌には自信がある。途中テンションが上がって多少アレンジも入れちゃったりもしたけど。 ステージの裏でまったりモードに突入しようとしていた俺達だけど、今はまだ文化祭真っ只中だ。一応連絡はしたけど、休憩時間を終えてからも戻らなかったことに対して、迅の反応が怖い。多分というか、絶対に怒られる。 「レイくん教室まで送ってくよ〜」 「安ちゃん、そのまま一緒に怒られて」 「それはやだ」 う"ーーー。俺別に悪いことはしてないよね? ぐだぐだしていると更に怒られる可能性が高くなるので大人しく教室に向かった。1-Sの前の廊下には相変わらずの、むしろ俺が休憩に入る前よりも順番待ちの列が伸びている。気持ち的には空いていてくれた方が良かったんだけど。 「ただいまー・・・」 お客さんの出入り口になっている前の扉ではなく、後ろ側の扉をそーっと開けて中に入る。するとーーー、 「お!おかえりレイラ〜」 「お疲れ様」 「・・・え?」 何故かそこには帰ったと思っていたカエラとサハラの姿が。しかも二人の手にはお盆が持たれていて、頭にはチェキの時に使ううさ耳やシルクハットがのっている。 え、何で普通に働いてんの。 「いや〜、」 「!」 「レイラが戻れないって聞いた時はどうしようかと思ったけど、まさかこんな最強の助っ人が二人も来てくれるとはね」 「・・・迅」 驚きに固まる俺の隣に急に現れた迅のおかげで状況は掴めた。つまり、二人が俺の代わりに働いてくれてたわけだ。廊下の列が長くなっていた事にも納得。

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