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ホームシック?
結局カエラとサハラは迎えが来るまでの間俺と一緒にウェイターとして働いて帰った。一応部外者なのに良いのかなと思ったけど、一緒に文化祭をやる事が出来たのは素直に嬉しい。
生まれた時から、むしろ生まれる前からずっと一緒にいた二人と、以前は常に一緒にいるのが当たり前だった。それが、別々の学校に通うようになり、お互いに別の誰かといることにも、いつの間にか慣れた。
きっとそれは自分達の視野が広がることにもなるし、十六弥くんが別々の学校に行かせた狙いの一つだとも思う。
バラバラでいることに慣れてきたとはいえ、やっぱり今日みたいに一緒に過ごすと安心する。しかも今日は短時間とはいえ、一緒に文化祭をすることも出来た。それが嬉しくて、そして離れるのが前より少し寂しくなった。
「何急に元気なくなってるんだよ。まだ文化祭は終わってねぇぞ」
「いてっ」
要が声をかけてきたと同時にデコピンが飛んできた。痛むおでこを押さえながら要の方を見ると、呆れたような、でも何だか優しい表情をしている。
「どうせ来月の冬休みにはまた会えるんだろ?すぐじゃねぇか」
これはもしかしなくても、カエラとサハラが帰ってテンションの下がった俺を心配してくれている。
「要って実はめっちゃ優しいよね」
「はあ?何言ってんだよ」
ツンデレだからストレートには優しさを表さないけど、それでも要が優しいことはみんな知ってる。ちょっと照れ臭そうにしてる姿を見ていると、さっきまでの寂しさが何だか少し和らいだ。
「なになに、二人で何話してんのー?」
「レイラがブラコン過ぎてホームシックって話」
「要が優しいツンデレって話」
全然話噛み合ってないじゃんと笑う凌。凌は意外と鋭いから、多分今の会話で俺達がしてた話を何となく察している。それでもわからないふりをしてニコニコしているのは凌の優しさだ。
カエラやサハラと離れていることに慣れることが出来たのはこの二人の存在が大きい。学園に来て二人以外にもたくさんの安心出来る存在が増えた。
それだけでもこの学園に来て良かったと思える。
「1-Sに入った瞬間お前ら三人に出迎えられて驚いたわ」
「俺も教室戻って二人が働いてて驚いたもん」
無事に文化祭が終了した。一日目は2-Sと接戦だった売上も、二日目の後半の追い上げで俺達1-Sは優秀賞をゲットした。それもこれもカエラとサハラが喫茶店を手伝っていることが口コミで広がり、一度1-Sを訪れた人までもが俺達見たさに再度来店してくれたのが大きな勝因だと思う。お兄ちゃん様々。
「でも三人で文化祭やれて楽しかった〜」
「騎麻は来客は大人しくしてろって呆れてたけどな」
「気にしない気にしなーい!」
自分の休憩時間に1-Sに来てくれた嵐ちゃんを俺達三人は全力でもてなした。殆ど付ききっ切り状態で嵐ちゃんの周りを離れない俺達に、呆れた要に途中で無理矢理離されるまでは。
「あ、カエラ達も一緒にスノボー行くって!」
「予定合ったのか」
文化祭も終わり再来週にはテスト期間に入る。そしてそれが終わると冬休み!騎麻からTOKIWAの新しくオープンするスキー場の視察も込めて、貸切でスノボー旅行に行こうという話が出ていたのだ。
「でも家族旅行に俺も行っていいのか?」
「いーのいーの!十六弥くん達も嵐ちゃんは来るもんだと思ってるし!」
今回の旅行には常磐家が大集合する予定。毎年年末年始は一族で集結しているけど、今年は日本に集合することになったので、そのついでに旅行に行くことにしたのだ。嵐ちゃんはもう俺の家族みたいなものだし、他の家族もそう思っている。
「あ〜でも絶対寒いよな〜やだな〜」
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