133 / 311

冬休み

「あ"あ"ぁぁぁあぁああー!!!」 「うるせぇよ」 「凌うるさい」 明日からのテストに凌がまた壊れている。相変わらず見た目に似合わずコツコツ勉強する派の要はいつも通りだし、俺は特に勉強しない。それが更に凌の不安を煽る様で、さっきからずっとこの様子だ。 普段から宿題も真面目にやってくるし、前回のテストでも問題無かったのに、何がそんなに不安なんだろう。 せっかくの自習という名の俺にとっては昼寝タイムなのに、10分おきに凌が質問をしに来る。しかも凌以外にもわからない問題を聞きにくる人がいるから困る。みんななかなか寝かせてくれない。それもこれも俺が前回のテストでしれっと学年1位をとってしまったせいなんだけど。 「あ、こらこらレイラ寝るなよ」 「レイちゃんここ教えて〜」 「レイラこの問題わかんねぇーっ」 もう、みんなうるさい。 それから二週間後、テストも無事に終わり明日からは待ちに待った冬休み。あんだけ騒いでいた凌もテストの結果が良かったらしい。俺の睡眠を妨害してまで勉強を教えたんだから当たり前だ。 「明日は17時からパーティーだよな?」 「そう!」 冬休み初日の明日はなんとクリスマスイヴ。そして明後日からは旅行だから、一日早いクリスマスパーティーを常磐の本家で開くことにした。まあ、パーティーと言っても簡単なホームパーティーだけど。 常磐家全体はお正月に集まるから今回は本家の人間プラス友達だけ。30人くらいかな?だから明日は朝一で家に戻って夕方からの準備をしなきゃいけない。 「嵐ちゃんは明後日の旅行の準備も忘れずにね!」 クリスマスの明後日には常磐家の家族旅行兼スキー場視察が待っている。冬休みは短いから予定がぎゅうぎゅう詰めだ。二泊三日で旅行に行って、30日はTOKIWAグループの忘年会で、元旦は常磐家の集まり。間で初詣にも行かなきゃだし、嵐ちゃんの家にも挨拶に行きたい。 「ハードすぎて倒れるんじゃないか?」 「年末年始は麻紀くんいるから大丈夫〜」 玲弥ちゃんの旦那さんで医者の麻紀くんも年末年始は本家にいる。俺の主治医でもある麻紀くんが近くにいれば、倒れる前に色々ケアしてくれるはず。 まずは明日のクリスマスパーティーなんだけど、実は一つ問題がある。クリスマスなのでパーティーのイベントの一つとして、プレゼント交換がある。毎年のことだからプレゼント交換用のプレゼントは用意済。 が、俺は大きなミスを犯してしまっている。 チラリと俺の隣で寛ぐ、お風呂上がりで色気ムンムンの男へ目をやる。冬なのに相変わらず風呂上がりは上裸姿で、がっつり割れた腹筋が今日もえろい。 「ん?どうした?」 「なんでもなーい」 そう、俺はすっかり忘れていた。嵐ちゃんへのプレゼントを。 そのことに気付いたのが一昨日。それまで本当にすっかり忘れていた。嵐ちゃんごめん。そして一昨日から必死で嵐ちゃんへのプレゼントを考えているけど、なかなか良いプレゼントが思いつかない。 嵐ちゃんが欲しいものは何だろうと考えても、嵐ちゃんは基本的にあまり物欲がない。更にいえば、ぶっちゃけ欲しいものがあってもすぐに手に入るのが俺達だ。 で、次に嵐ちゃんの好きな物を考えた。珈琲、筋トレ、バイクに映画、そして俺。 そこで俺は思った、むしろ俺が一番のプレゼントじゃね? そんなことを思っていたら二日が経っていた。なんというか、考えれば考えただけ俺の思考が変な方へ飛んで行く。 「嵐ちゃんって俺のこと好きだよね?」 「どうした急に。好きだけど」 とりあえずサンタのコスチュームだけは用意が出来たのでどうにかなるだろう。うん。

ともだちにシェアしよう!