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難易度が高いほど燃える
「よし、超難関コースから行っとくか」
「初っ端から攻めるね〜」
「私達は中級くらいからにしておくわ」
真っ先に超難関コースへのリフトに向かう十六弥くんに続き亜津弥くん、カエラ、真斗。カレンちゃん、華南ちゃん、麻紀くん、柚乃はマイペースに中級コースから。そして目を離すのが怖い和紗と愛紗を連れて、玲弥ちゃんと騎麻、サハラと風月が上級者コースへのリフトに進んでいく。
「嵐ちゃんどこから行く?」
「・・・聞く必要あるか?」
そう少し呆れた顔で聞き返してくるのは、俺がすでに十六弥くん達の後を追って歩いているからだろう。まあ、一応希望は聞いておこうかと思って。
出発前に聞いた話では、嵐ちゃんスノボーは得意だって言ってたし。普通についてきてるってことは超難関コースで決まりだよね。
「お、お前らもこっちからか」
リフト乗り場で十六弥くん達に追いついた。普段から20代にしか見えない常磐の大人達だけど、今みたいな格好をしていると更に若く見える。
そこからは四人がけのリフトに三人づつに分かれコースがスタートする山の山頂付近を目指す。山を丸々ゲレンデとして作っているだけあって、移動時間がなかなか長い。
15分以上かけてやっと着いた超難関コースは、斜面の角度もさる事ながら、ゲレンデというよりも自然の雪山に近い印象だった。流石に岩場や崖からは離されているけど、凹凸が激しく少し道を逸れると森林に突入しそうな勢いだ。
「一応超難関コースに乗れるリフトは、ある程度の経験がある人しか乗れないようにパスを別にしようと思ってる」
確かに興味本位で挑戦するには難易度が高いかもしれない。
チラリと隣にいる嵐ちゃんを覗き見る。半強制的に連れてきてしまったけど、今更ながら初めからこのコースで良かっただろうか。
「ん?俺達から行くか?」
が、心配は無かったみたい。俺の視線を早く滑りたいと勘違いしたのか、何のためらいもなく一番乗りで滑り出してしまった。
「え、待ってよ嵐ちゃん!」
「俺達も行くぞ」
嵐ちゃんを追って俺が飛び出し、その後を残りの四人も一斉に滑り出す。それにしても先頭を行く嵐ちゃんだけど、めちゃくちゃ滑るのが速い。運動神経の良さは知っていたけど、この凹凸の激しいコースで何の危なげもなく、むしろ余裕でジャンプなんかしちゃいながら進んでいく。
そんな嵐ちゃんの姿を見てしまうと負けず嫌いの俺としては、俄然燃える!!しかもそれは俺の後ろにいた四人も同じみたいで、特にわかり易く十六弥くんからはすごい熱気のようなものを感じる。
「気付いたらすげぇ勢いで後ろから追われててビビったわ」
何故か競い合うように技を決めながら猛スピードで山頂から下まで滑り降りた。それはもう本当に速かった。あんなに時間かけてリフトで上ったのに一瞬でスタート地点に逆戻り。
「だって嵐ちゃんがあんなに上手いとは思わなくてさ〜」
「なんか燃えたわ」
「ま、最終的には十六弥さんがぶっちぎったけどな」
真斗の言う通り最終的には十六弥くんがアラフォーとは思えない相変わらずの身体能力を見せつけてきた。なんで俺達よりも二倍以上も歳をとってるのに身体能力衰えるどころか成長してるんだか。流石俺様何様十六弥様。
「餓鬼にはまだまだ負けねぇよ」
十六弥くんが誰かに負けている姿というのは見たことないし、想像も出来ない。というか、多分その姿を見ることは一生ない気がする。だって十六弥くんだし。
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