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過保護?
一通り全部のコースを滑ってからは昼を過ぎていたこともあり、一度コテージでみんなで昼食をとり、休憩をとってからまたゲレンデへと繰り出した。
そこで一つの事実に俺は気づいてしまった。
「このウェア普通のよりは温かいけど、別に寒くない訳じゃなかった・・・。浮かれてて寒くない気でいただけみたい・・・」
一度コテージの温かさを体が知ってしまった後に再度外へ出た時の寒さが辛い。さっきまで平気なつもりでいたのが嘘のようだ。
「俺と嵐は超難関コース行ってくるけど」
「俺はもうちょい温まってからにする〜」
みんながそれぞれ好きなコースへと散っていく。カレンちゃん達ママチームにプラス麻紀くんは午前中で満足したのか、コテージのソファでお茶会が開催されようとしていた。
俺も少しの間そこに混ざって、温かいココアでも飲んでから再開することにしよう。そうしよう。
「カレンちゃん俺もココア〜」
「あら、レイラも残るの?」
「だって寒すぎ」
すぐにスタッフが持ってきてくれたココアを受け取る。熱すぎない程よい温度のそれに感心する。TOKIWAの経営する店やホテルなど、何処に行っても俺達の好みを把握しているから凄い。まあ、同時に俺の猫舌が全世界に知れ渡っているということでもあるんだけど。
少し休憩したらまた滑りに行くつもりが、思いの外長くまったりしてしまった。体はかなり温まったけど、逆に外に出るのが辛い。し、温まったら眠くなってきた。今日も朝早くに本家を出発してきたから、ぶっちゃけ寝足りない。
夕方で更に気温も下がってきたし、ゲレンデに行くのはまた明日でも良いかな〜。
「あ!いたレイラ!」
「?なに和紗〜」
(嵐太郎視点)
昼食後は寒さと眠さにやられただろうレイラをコテージに残して騎麻と滑りに出た。あいつを残して行くことには多少気が引けたが、本人は温かい室内で幸せそうに大人達にじゃれていたので問題ないだろう。
「学園外で騎麻と二人って久々だな」
「確かに。嵐は最近レイラとセット感覚だからな〜」
妬いちゃうな〜と言葉の割りに柔らかく笑う。生徒会の仕事もありあまり従兄弟にばかり構っていられない騎麻からすると、色々と危なっかしいあいつが俺と行動することは安心出来るらしい。それに何より俺達の関係が上手くいっていることを一番喜んでくれているのも、もしかするとこいつかもしれない。
「あ、でも十六弥さんが嵐がレイラを独占するってちょっと拗ねてるって父さんが言ってた」
「別に独占してるつもりはないけどな・・・」
それにしてもあの家族、みんながみんなレイラを可愛がりすぎだろう。いや、俺もかなり可愛がっている自覚はあるけど。兄とはいえ同い年のカエラとサハラもレイラを最優先として可愛がっているし、カレンさんはそこまで極端ではないが、十六弥さんはあからさまにレイラのことを一番気にしている。
「お前ら全員レイラに対して過保護だよな」
「・・・嵐に言われるとは思わなかった台詞だけど、そういえば嵐は知らないのか」
「何をだ?」
嵐は知ってた方がいいね、そう言い話し始めた騎麻。
三つ子でかつアルビノとして産まれたカエラ、サハラ、レイラ。幸いアルビノによく見られる弱視や皮膚疾患などといった症状は現れず、日光への耐性が人より無いこと以外は普通の子供と変わらなかったらしい。ただ、三人の中でも末っ子のレイラは昔から体調を崩しがちで、入院も何度か経験したんだとか。
「で、4歳の冬にレイラだけがインフルエンザにかかった時があって、伝染らないようにってカエラとサハラと離して隔離したんだって」
「まあ、よくあることだな」
「そう。でもレイラにとっては二人と離されたのが初めての経験だったんだよ」
いつもレイラが体調を崩しても基本的に風邪などでは無く体力的なものだったりするので、別に伝染る心配が無かったし、風邪を引く時は大体三人同時に引くことが多かったらしい。
ただ、その時は元から体調を崩し気味だったレイラだけが運悪くインフルエンザを発症させたのだ。
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