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寒くて暗くてひとりぼっち
あぁ、これはまずい。
強かった吹雪も徐々に落ち着きを取り戻そうとしている。それは有難い。が、視界が戻ってきたことによって気づいた事態。
「完全に迷子・・・」
木を避けて道を進んでいたつもりが、気付けばどの方向に向かっても木がある。むしろ完全に森林地帯に入り込んでいる。しかも割りと奥まで入り込んでしまったのか、コースへの戻り方もわからない。
え、俺今めっちゃピンチ?いや今というより大分前からピンチだけど。
寒さのせいで俺の体力の残りはゼロに近い。お腹も空いたし、なんだか眠い。こんなことになるなら大人しくコテージにいれば良かった。
別にこのことで和紗だけが悪いとは思わない。むしろ和紗のお願いを断らなかった俺に責任がある。
ポケットからiPhoneを取り出すが残念ながら電池切れの状態。これでは何の役にもたたない。今が何時かはわからないけど日は完全に沈んでいる。
色素が薄くて光に弱い俺の目は、夜だと逆に少ない光で辺りを見ることが出来る。それでもまだ吹雪の名残で月が姿を現さない状態では、あまり遠くを見ることが出来ないけど。
「早く帰らないとなぁ〜、今夜は嵐ちゃんとの約束もあるのに・・・」
無意識のうちに左耳へと手を伸ばす。早くみんなのもとに帰りたい。そしてまずは暖かいお風呂に入って、それからご飯を腹いっぱい食べる。で、夜はちょっと体力が残ってないかもしれないけど、そこは嵐ちゃんに頑張ってもらおう。
そんなことを考えながらも疲れた体はなかなか動かない。少しの間休憩をしようと思い、目に付いた少し開けた場所に座り込む。寒いことには変わりないけど、ずっと吹雪の中で踏ん張っていた足から力が抜ける。
思った以上に疲れた。多分だけど熱もある気がする。座ったのはミスだったかな、頭がクラクラしてきた。徐々に霞んでいく視界と下がっていく瞼に抵抗することが出来ない。
寒い、眠い、暑い、頭が痛い、みんな、どこ?一人はやだなぁ・・・。あぁ、何だかこの感覚、前にもあったな。それはいつのことだっけ?・・・思い出せない。
「・・・ぃら、レイラ!!」
「ん、」
体を強く揺すぶられ意識が浮上する。あれ、俺いつの間に寝ていたんだっけ・・・。それに、異常に寒い。
「レイラ無事か!?」
「今回は池には落ちていなかったんだな・・・」
池?なんの事を言ってるんだろう。それより寒い。
「一旦これを飲め」
抱き起こされた状態のまま口元に寄せられた魔法瓶。そっと口を付け中に入った液体を飲み込む。それは温かくて甘い、ココアだった。冷えきった体にじんわりと熱が戻っていくのを感じる。
「コテージには連絡した。戻ったら風呂と食事が出来てるはずだ。レイラ動けるか?」
「ん、大丈夫」
「みんな心配しているからな。嵐太郎をコテージに置いてくるの大変だったんだぞ」
温かいココアのおかげで何とか動けそう。だけど、思ったより力が入らずふらついたことで、結局十六弥くんに抱き上げられた。
「熱があるな・・・。明日も嵐太郎達と遊びたいなら今夜は大人しくしとけよ」
「ん〜・・・、
らんたろーって誰のこと?」
俺のまわりにそんな名前の人はいたっけ?
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