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(嵐太郎視点)

地図を見た十六弥さんが向かおうとした場所を見た瞬間嫌な予感がした。 一緒に行くと何度主張しても結局連れて行っては貰えず、歯痒い気持ちで二人の背中を見送った。 それから約20分後。レイラを発見したという連絡に言葉に出来ない程心が安心した。亜津弥さんの指示通りみんなで手分けして風呂や食事の用意をコテージのスタッフに手配し、三人が戻ってくるのを待った。 それから暫くして戻ってきたレイラは十六弥さんに抱えられはしているが、意識もはっきりしている状態で怪我も特には無いようだ。しかし何故か堅い表情の十六弥さんと亜津弥さんは、大人達だけを引き連れてどこかに行ってしまった。 どういうことか分からない俺達はただただ待つことしか出来なかった。 そして10分程経過したところで亜津弥さんと麻紀さんだけが戻ってき、そこで話された内容に、一瞬何を言っているのか理解することが出来なかった。 「3年分の記憶がない」「嵐太郎のこともわからない」 確かに俺とレイラが出会ってまだ一年も経っていない。だが、出会ってからずっと同じ部屋で過ごし、沢山会話し、沢山同じ時を過ごした。なんなら数時間前まで一緒にいたというのに、俺のことを知らないという。 「嵐、大丈夫か?」 「・・・あぁ、流石にショックはデカいがな」 心配そうに俺の様子を伺う騎麻に軽く苦笑いを返す。 ただ、ここでショックを受けている場合では無い。忘れたもんは、思い出させればいい。思い出せないというなら、初めからでもやり直してやる。 まずは怪我も無く戻ってきたあいつを抱きしめてやろう。 ガチャ 「「「「!!」」」」 「レイラ!!」 「大丈夫なのか!?体調は!?」 「レイラぁ〜ごめんなさぁ〜い」 風呂に行っていたらしいレイラが戻ってきたのを確認した瞬間、みんなが駆け寄る。泣きながら謝る和紗を撫でる姿はいつも通りで、本当に記憶が無いのかと不思議に思うほど自然だった。 そんなことを頭の片隅で思いながらも気付けばその白すぎる体を抱き締めていた。 「レイラ、無事で良かった」 「!」 一瞬腕の中で驚いたように動いたレイラだが、恐る恐るといった感じに俺の背中に手を伸ばしてきた。そのぎこちなさに本当に俺の事を忘れているのかと、悲しくなりながらも拒否はされない事に安心する。 「えっと、心配かけてごめんね・・・らんたろー?」 「レイラレイラ、"嵐ちゃん"だよ」 いつもとは違う呼び方をするレイラにすかさず近くにいたカエラが声を掛ける。出会った時からずっと呼んでいるその呼び方さえわからないとは、本当に今のこいつの中に俺という存在が無いのだなと思った。 それでも不安そうにしながら俺の顔を覗き込みつつ、俺の服をしっかりと掴んでいるその姿は俺の大好きなレイラに違いない。 「レイラ、覚悟しておけよ」 「え、」 「お前がもし俺のことを思い出せないなら、一からまた俺に惚れさせてやる」 元々俺はノーマルだったお前を落とした男だぞ?それに一度手に入れたもんを簡単に手放す程、俺は優しくない。 (嵐太郎視点終了)

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