149 / 311

芯から温まる

午後からは予定通りスキー場を後にして近くにある温泉へと向かった。普段から常磐家の大きな風呂に入っているけど、やっぱり温泉は違う。 「ひろーい!!」 外の景色の見える広い湯船。小さな滝のように源泉の流れるそれはほのかに白く濁っている。なんの効能があるのかは知らないけど、きっと体に良いんだと思う。 「おいしっかり体洗えよ」 「こら、はしゃぐな餓鬼共」 テンションが上がって早速湯に浸かろうとした俺やカエラ、和紗の行動を先読みしたような亜津弥くんと十六弥くんの言葉に動きを止める。そう言えば温泉にはマナーがあるんだっけ。危ない危ない。 「真斗〜お兄ちゃんが背中洗ってやろうか?」 「遠慮しとく」 騎麻は相変わらずだな〜。それに比べて真斗は俺が知っているよりも何倍も大人びている。俺が知っている真斗は騎麻にもっと甘えていたのに。ほら、騎麻が寂しそうにしてるよ。 「騎麻、そんなに洗いたきゃ俺の背中を洗え」 「俺のも」 「・・・いいけどさ」 そんな二人のやり取りを見ていて面白がっている十六弥くんと亜津弥くんは大分悪い顔をしている。真斗にフラれた騎麻が渋々といった感じにタオルを持って二人に近づく。 「レイラは俺が洗ってあげるよ」 「じゃあ俺はカエラを」 「じゃあ俺がサハラ洗うー!」 俺の後ろにカエラ、サハラ、和紗の順に列が出来た。なにこれ面白い。 「じゃあ俺嵐ちゃん!」 「前も洗ってくれていいぞ」 「馬鹿!!」 最終的には麻紀くんと真斗も巻き込んで長い列が出来上がった。 「あっ、十六弥くんそこは洗わなくていいから!!」 「遠慮するな」 「遠慮じゃないっ、んぁ、!」 「えろい声出すな馬鹿」 いつの間にか俺の背後に回っていた十六弥くんに背中だけでなく前も洗われ、しかも変に刺激してくるもんだから声が漏れてしまう。理不尽だ。しかも少し勃った。これではまるで俺が変態みたいじゃん・・・。そして反応したそこをガン見している人間が一人。 「・・・なに嵐ちゃん」 男同士とは言え、あまり人の息子をガン見するのは良くないと思う。しかも今ちょっと俺勃ってるし。 「いや、今俺誘われてるのかなって考えてた」 「ごめん、誘ってはない」 このエロ魔人が。ちなみにちらっと見た嵐ちゃんの息子さんはとても立派でした。別に男としての敗北感とかはない。だって俺はあの十六弥くんの息子だし。将来有望だから。ほら、見てよあの真っ裸で窓の外を眺める十六弥くんの堂々たる下半身を。 その後はみんなで湯船に浸かる。熱めのお湯が体を芯から温めていく。 ・・・熱い!! 「ギブっ!!」 まだ湯船に浸かって5分も経たないが、思った以上に熱いお湯にギブアップだ。俺の後に続き和紗、カエラ、サハラの順に次々と湯船から上がってくる。 「温泉熱っ」 「もう無理だ〜」 「俺も・・・」 海外育ちでシャワー派の俺達には日本の温泉は熱すぎた。俺達がギブアップした後も平気な顔でお湯に浸かり続ける十六弥くん亜津弥くん麻紀くんと騎麻真斗嵐ちゃん。すごいなー。日本人は肌の構造が違うのかな。いや、十六弥くんと亜津弥くんはハーフだけど。

ともだちにシェアしよう!