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終わりよければすべてよし
「え、記憶戻ったの?」
「そ〜お騒がせしました〜」
「全くだ」
予想通り朝起きれなかった俺達は騎麻とサハラによって叩き起された。常磐家の早起きトップ1.2の二人は早朝だというのに支度もばっちりで、朝の6時半なのが嘘のように元気だった。
その後どうにか着替えを済ませ、みんなの集まる宴会場へと向かうと、既に俺達以外のみんなが集まっていて、朝食の準備もととのっていた。
それぞれの席に着き一斉にご飯を食べ始める。ちなみにいつもは俺の隣は右にカエラ、左にサハラが座るのが定番だけど、嵐ちゃんがいる時は右に嵐ちゃん、左にサハラ、その隣にカエラの順になる。俺達兄弟は左利きだから基本的に嵐ちゃんは右側に座ることが多い。腕がぶつかって邪魔だからね。
「念の為もう一回軽く診察するからね」
「ぅは〜い」
ご飯の後は麻紀くんによる体調チェックの時間。俺の周りをそわそわと落ち着きなくうろつく和紗がなんだかちょっと可愛い。心配しなくても俺は元気だよ〜。
「レイラ、レイラっ、ほんっと〜にごめんねっ」
ぎゅっと抱きついて頭をぐりぐり押し付けてくる和紗の頭を撫でてやる。普段から悪戯っ子の和紗だけど人が本当に嫌がることや、迷惑をかけることはしない。だから、今回の出来事はなかなかショックが大きかったみたいだ。
「和紗、スキー場がオープンしたらまた一緒に滑りに行こうね」
「!うんっ」
やっと笑顔になった和紗に周りにいたみんなもホッとしたようにつられて笑顔になる。折角の家族旅行だ、やっぱり笑顔で終わらなきゃだよね。それに何より、途中でアクシデントもあったけど、今回の旅行も間違いなく楽しかった。
二泊三日の旅行は内容こそ濃かったけどあっという間に終わった。午前中には旅館を出発し、そのまま嵐ちゃんを家に送り届けてから俺達も本家に帰宅。温泉でゆっくりしたはずなのに、それでもやっぱり疲労感がある。
良い子でお留守番をしていたティノを抱き上げてもふもふ。癒される。
思う存分もふもふしてからティノを床に降ろすと、床に転がっていた玩具のボールを銜えてこちらを見上げてくる。その眼が"あそぶ?あそぶ?"と訴えてきている。
「ティノいい子にしてたもんね〜遊ぼ〜」
「わんっ」
ティノのためなら疲れていたって全力で遊ぶんだから!
「ごめんもぉ無理〜」
「くぅ〜ん」
そんな悲しそうな鳴き方しないでよ〜。なんだかんだ一時間近くティノとボール遊びをした。ただボールを投げてるだけなら楽だと思うじゃん?実際はめっちゃ大変。ボールを取ろうとする時にティノがフェイントをかけて逃げたりするせいで、何度もしゃがんでは立ってを繰り返す。誰に似てこんないたずらっ子になったの。もう足がぱんぱんだ。
「うわ、レイラこんなとこに転がってたら踏んじゃうよ。寝るならベッド行きな〜」
「動きたくな〜い」
遊び疲れて床の上に転がっているとサハラに踏まれかけた。良かった十六弥くんじゃなくて。十六弥くんなら気付いても確実に踏んでくる。
起きな〜と言ってくるサハラと動きたくない俺。試しに両手を上げて起こしてポーズをしてみたら、優しいお兄ちゃんは軽々と俺を抱き起こしてくれた。
・・・流石兄弟一のパワー型。軽々と持ち上げられたって今更驚かないさ。
「ちょっと重くなったね」
「重そうな素振り1ミリも無かったくせに〜」
「まだ重くはないかな」
サハラは俺より多分7〜8キロ体重が重いけど、それでも身長に対しては軽いはず。カエラは更に2キロくらい軽い。二人共平均的に見たらかなり痩せている部類に入るはずなのに、俺だけガリガリ扱いなのには納得がいかない。
コアラの様に抱っこされたままサハラに移動されている俺。このままベッドまで連れて行ってくれるみたい。
「サハラ大好き」
「俺もレイラ大好き」
相思相愛。目の前にある首筋に顔を寄せて深呼吸。うん、落ち着く。
「あ!なに二人でいちゃついてんの!お兄ちゃんも混ぜて〜」
部屋に着く直前で丁度隣の部屋から出てきたカエラが俺達を見て近づいてきた。そのまま俺とサハラをまとめて抱きしめる。幸せのサンドイッチ。
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