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あけましておめでとう
「・・・3.2.1」
『 あけましておめでとー!!!』
付けていたテレビのカウントダウンと共に新年の挨拶を交わす。いやー、毎日来る0時がこの日だけは特別になるから面白い。
「よし、とりあえず初詣行っとくか」
「わーい!甘酒ー!!」
「愛紗はたこ焼きー!!」
十六弥くんの言葉に和紗と愛紗が反応する。
「さっきまでずっと食べてたのにまだ食べるのかよ」
まだ俺の傍に避難中の真斗が双子を呆れたように見ている。成長期の真斗もなかなかの食べっぷりだと思うけど、あの双子は更にその上を行くからな~。でも、
「俺も甘酒楽しみ~」
「甘酒いいよな」
「俺はイカ焼きかな」
「・・・お前ら全員食い気かよ」
え、だって初詣の楽しみって屋台での食べ歩きだよね。真斗と同じく呆れ気味の嵐ちゃんのことは気にせずカエラとサハラと何を食べるか相談中。日本の屋台に行くのは久々だからな~。
「嵐ちゃん知ってる?屋台ではカード使えないんだよ」
「そりゃそーだろうな」
実は初めてお祭りの屋台に行った時に、現金を持っていなくてカエラとサハラと屋台の前で呆然としたことがある。その時は近くにいた優しいお兄さんが俺達の分も買ってくれて無事にたこ焼きをゲットすることが出来たけど、その後めちゃくちゃ十六弥くんに馬鹿にされた。
その事がちょっとしたトラウマの俺達は、それからはカードだけじゃなくて現金も持ち歩くようになった。
ちなみに一万円札は低価格でやっている屋台で支払うには向いていないと騎麻達に聞いて、嵐ちゃん達が来る前に急いで和紗達を連れてみんなで両替をしに行った。
「見て、おかげで財布が小銭でパンパン」
「・・・たまにお前らが金持ちなの忘れそうになるわ」
なんでかちょっと残念なものを見る目をしているのは気にしないでおこう。準備は大切なんだから。
「う"~さっむ~~~」
「やっぱ夜はキツいな」
冬の夜中はかなり冷え込む。常磐の本家から歩いて15分程のところにある、この辺りでは割りと有名な神社を目指してぞろぞろと列が続く。みんなも夜中の初詣に向かっているんだろう。
「今日は一段ともこもこだな」
「可愛さと温かさが満点」
今俺が着ているファーとボアが盛り盛りのロングコートは、見た目のボリュームに反して中身は羽毛で軽くて温かい。つまり、最高。流石に顔面を覆うわけにもいかないから顔は寒いけど、目の下ギリギリまでをマフラーで覆いフードを被ればどうにか耐えられる。
日本の冬はヨーロッパよりましだと思うけど、寒い事にはどちらも変わらない。
神社に近づくにつれてどんどん増えてくる人の数。それと一緒に漂ってくる色々な食べ物の混ざり合った匂いにわくわくが止まらない。
唐揚げ甘酒たこ焼き焼きそばりんご飴クレープ・・・
「やっぱり最初はたこ焼きから行ったほうがいいのかな!?」
「何がやっぱりかはわからんが、好きなのから行けばいいよ」
「じゃあとりあえず甘酒飲む!」
甘酒甘酒~っ。
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