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熱々の魅惑

「よっ」 「レイラ君!あけおめー!!」 「要!凌!おめおめ~」 事前に決めていた集合場所で嵐ちゃんと甘酒を飲んでいると約一週間ぶりの要と凌が現れた。 「結城先輩あけましておめでとうございます!」 「おめでとうございます」 「ああ、あけましておめでとう」 無事に合流出来た所で一旦近くの屋台を見て回ることにした。さっき別れた十六弥くん達も近くの屋台を見て回ってからまた後で合流する約束をしている。 とりあえず近くの屋台から順番に見て回ることにした俺達は、まずは唐揚げ屋の屋台に並ぶ。あ~いい匂い。 「え、ちょっと、」 「一体どんだけ唐揚げ食うんだよ」 屋台の脇で待っていた凌と要が驚きの声を上げる。うん、俺もそう思う。 「なんかおまけしてくれた」 そう言う俺と嵐ちゃんの両手にはカップに山盛りの唐揚げが全部で4つ。呆れた顔でこちらを見てくるけどこれは俺だけのせいじゃない。屋台のおじさんが俺達を見た瞬間、"イケメンは宣伝になるから持ってけ"と言って大量におまけしてくれたのだ。嬉しい。嬉しいけど、 「熱過ぎて食べれない・・・」 揚げたての唐揚げからは見るからに熱そうな湯気がたっているし、持っているカップ越しにも熱が伝わってくるから間違いない。 「意外と美味いな」 「やっぱ熱々が美味しいよね~」 「猫舌とかお前残念な奴だな」 「・・・みんな意地悪だ」 俺が猫舌なのを知ってて目の前で次々と熱々の唐揚げを口に放り込んでいく三人を恨めしい気持ちで睨みつける。要に至ってはただの悪口だ。 恐る恐る爪楊枝に刺さった唐揚げを小さく齧ってみようとして、まだ無理だと思いそっと口を離す。う"~俺も食べたいのに。 「おい、レイラあそこ・・・」 「ん~?」 俺が唐揚げと格闘していると嵐ちゃんに呼ばれ嵐ちゃんの指さす方へと視線をずらす。するとそこではー・・・ 「ねぇねぇ君たち二人で来てるの~?」 「良かったら俺達と一緒に遊びに行こうよ」 なんだか頭の弱そうな大学生がナンパをしている。ほら、女の子達が困った顔をしているじゃん。そんな微妙な声のかけ方じゃ着いていく子はいませんよ。 それにその子達に声をかけるのはちょっと身の程知らずにも程があるんじゃないかな?だって、 「ねぇそこのお兄さん、 俺の連れに何か用かな?」 「「!!」」 大学生二人は急に後ろから声を掛けられ驚いて振り返ると、そこに立っていた人物を見て更に驚く。笑顔で声を掛けているはずなのにその目は一切笑っていなくて、普段を知っている俺達からしても怖い顔をした、騎麻が立っていた。 「や、その、」 「いや、ちょっと道を聞いてて・・・」 「へぇ~?」 「「すみませんでした!!!」」 騎麻の圧力に負けた二人は人混みを掻き分けるようにして逃げていった。うん、それが正しい判断だと思うよ。 「騎麻、遅いわよ?」 「騎麻兄がなかなか戻らないから変なのに捕まったじゃん~」 「ごめんごめん、大丈夫だった?柚乃、風月」 いつもの優しい笑顔に戻った騎麻が手に持っていた飲み物を二人に渡す。騎麻の目の前で風月と柚乃をナンパするなんて馬鹿だな~。

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