162 / 311

常磐の当主

「ふぁ~・・・」 今日何度目か分からない欠伸。昨日、というか今日は夜中に初詣に行って、結局解散して家に着いたのは夜中2時半頃だった。そこからすぐに眠ったけど、起こされたのが6時半。最低7時間、出来れば9時間は毎日寝たい俺にとっては地獄。 「レイラ眠そう」 「めっちゃ眠い~」 「俺も」 俺の横で一緒にティノと遊んでいたカエラが眠そうに目を擦りながらボールを投げた。俺達の眠さなんて知らないティノは、投げられたボールを咥えて元気に走り回っている。 「おら、そこのぐうたら共」 「!!鴻來くん!」 「あらあら、私もいるわよ?」 「リディアちゃん!」 うとうとしかけていた中で急に聞こえた声に勢いよく振り返る。そこに立っている二人の姿に一気に眠気が吹き飛んだ。 常磐鴻來くんと常磐リディアちゃん。この常磐の本家の現当主であり、十六弥くん達のパパとママ。つまりは俺達のグランパとグランマ! 二人は60歳だけど見た目はもっともっと若い。勿論見た目だけじゃなく、中身も若さに満ち溢れているんだけど。 そんな元気バリバリの鴻來くんは十六弥くんの前のTOKIWAの社長だった。でも5年前にいきなり十六弥くん達にグループを任せて、あっさり社長を辞めてしまった。 まあ、十六弥くんや亜津弥くん、玲弥ちゃんはそうなる事が前々から分かっていたのか、特に驚くこともなくサラっと跡を継いでいたけど。 「わー!今帰ってきたの?」 「ええ、お土産もいっぱいあるわよ」 やった!現役を引退した鴻來くんはリディアちゃんと趣味で世界中を旅している。思いつくままに色々な国や土地に行き、気に入ると数ヶ月間そこで暮らす。そしてまたどこかへ移動していく。そんな生活を一年中繰り返しているから、俺達が会えるのも年に2.3回。 「お、帰ってたのか」 「父さん母さん久しぶり~」 鴻來くん達が帰ってきたことに気付いたみんながぞろぞろと集まってくる。みんな二人に会うのは久々だから順番にハグをしていくけど、人数が多いのでなかなか終わらない。 「ちょっと見ないうちに老けたか?」 「そりゃ孫が9人もいるおじいちゃんおばあちゃんだもの」 「うるせぇ俺はまだまだ現役だ」 十六弥くんがニヤニヤしながら言うけど、実際は全然そんなことは無い。むしろ若々し過ぎておじいちゃんおばあちゃんという言葉が似合わない位だ。 ダンディーな鴻來くんとエレガントなリディアちゃん。流石。大好き。 「ねぇねぇ俺身長伸びたでしょ~」 「確かに。去年会った時はこんな豆サイズだったのにな」 「・・・そこまで小さくなかったよ」 俺の頭を撫でながら自分の腰くらいの位置を示す鴻來くんだけど、流石にそこまで小さくない。胸元くらいまではあったと思う。多分。 あ~でもリディアちゃんの身長は抜けたけど鴻來くんの視線にはまだ届かない。平均身長は超えたはずなのにこの家にいると中間くらいなんだよな・・・。 「麻紀くん、午後までに身長伸ばす方法ある?」 「ん~とりあえず引っ張っとこうか?」 それで伸びるならいくらでも引っ張ってもらうけどさ。 午後には常磐家お正月の恒例行事、身体測定が待っている。

ともだちにシェアしよう!