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(嵐太郎視点)

「見て見て!これレイラ君かな?」 休み時間に興奮気味の貴一が見せてきたのはT.KRNのオフィシャルページ。レイラの母親であるカレンさんのブランドで、貴一はそこの大ファンだ。 「あ、もう新しいのアップされてるんだね」 「先週のやつか」 冬休みに撮影があるとは聞いていた。貴一が見せてくれたページを近くに居た騎麻と共に横にスクロールしていく。 顔の印象が強すぎるレイラは、あえて顔を写さないことで服へ目を向けさせるようにしていると、前に言っていた。そのためどの写真も顔がはっきり写っているものは無い。それなのに、独特の、強い存在感を感じるそれに、ただただ感心する。 「・・・これ」 ページを進めていくと現れた写真に思わず動きが止まる。 レースのワンピースを纏ったモデルがレイラに跨っている写真。ワンピースと言いつつ透け透けのそれは中の下着がくっきりと浮いている。それはレイラの方も同じく上は裸で、下はデニム穿いているが、前は大きく肌蹴ており下着が見えている。 しかも実際にはしていないのだろうが、かなりすれすれのライン、二人の唇が触れているように見える。 写真ですら思わず二人のその後を想像してしまいそうな程の雰囲気の出たそれに、思わず顔が引き攣るのが自分でもわかった。 「嵐、顔が怖いぞ」 俺の様子に気付いた騎麻が声を掛けてきたが耳を軽く抜けていく。 撮影の為とはいえ、他人とのそういう姿は見たくなかった。二人の間に何も無いのが分かっていても、顔が写っていなくても、熱を感じるのは、モデルの実力の高さなのだろう。 しかしそれを素直に凄いという感情だけで終わらせれる程、俺の心は残念ながら広くない。 「実際は重ね着する服なんだけど攻めてるよね」 いつもの様に寛ぐレイラに昼間見た写真を見せると返ってきた反応に、思わず眉を寄せる。それだけか? つい、その後感情に任せてレイラを問いただすような雰囲気になってしまった。それでも返ってくる答えは俺が欲しているものでは無く、もやもやが溜まっていく一方だ。 「俺が嫌だと言ってもやるか?」 「やる」 即答するレイラに思わずイラッとした。モデルの仕事が駄目とは言わない。むしろ誰でも出来る訳では無いそれは凄いと思う。ただ、モデルはレイラだけでは無い。それならば、顔を写さないレイラが、絶対にやらなくてはいけないのだろうか? 途中から意地になっていたのか、お互いに引くことの無かった言い合いは、レイラが部屋を飛び出して行ったことにより終わった。 「あ"~くそっ」 俺はそんなに難しいことを言っただろうか。 (嵐太郎視点修了)

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