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それが夢だから

「・・・きて、起きてレイラ」 「んぅ・・・?」 優しく揺り起こされ目を覚ますと、見慣れない部屋。あぁ、そういえば昨日は騎麻の部屋に泊まったんだった。 今日は折角の土曜日。いつもだったら嵐ちゃんとトレーニングルームに行ったり、部屋で映画を観たりしてまったり過ごすんだけど・・・。 「あれ、いらっしゃい」 「お邪魔しま~す」 まだ自分の部屋に戻る勇気の出なかった俺は騎麻に引っ付いて生徒会室に来た。そこには既に土曜なのに生徒会メンバーが揃っている。 「あ!レイラ君写真見たよー!今回も良いのばっかだったね!!」 「!!」 「・・・貴一の馬鹿」 「え」 写真・・・。普段だったら嬉しいはずのまみちゃんの言葉で、昨日出し切ったはずの涙がまた溢れようとしているのがわかる。それに気付いた騎麻に手を引かれてソファに座らせられる。座るとそれが合図だったかのように大量の涙がドバドバと流れ始めた。 「・・・で、今こいつらは冷戦中なのです」 騎麻がざっくりと昨日の出来事を説明してくれ、その間にどうにか俺は自力で涙を引っ込めた。 「ごめん!レイラ君まぢごめん!!」 「謝らないで。まみちゃんが見せなくてもいつかは目に入っただろうし」 そう、別にまみちゃんに責任は何も無い。まみちゃんが見せていなくても、いずれは嵐ちゃんの目に入っていたはずだから。 「それにしても嵐太郎は意外と嫉妬深いんだね」 「響ちゃんは恋人が同じ状況でも許せる?」 「まあ、仕事だって分かってるし、その子が俺の事を一番好きなのを分かってれば見守るかな」 響ちゃんの言葉にまた涙が出そうになるのをなんとかギリギリで耐える。多分、その言葉は俺が嵐ちゃんに言って欲しかった言葉だ。 「嵐太郎にもそうしてあげたい気持ちもあるんだろうけど、我慢出来ないくらいレイラ君の事が好きなんだろうね」 「・・・俺も嵐ちゃんの事大好きなのに」 俺がモデルに拘るは、それが俺の夢だからだ。今もモデルの仕事をしているけど、それはあくまでカレンちゃんの手伝いとして。顔を出していないのは、服へ目を向けさせる為なのも事実だけど、表現力を身に付ける為でもある。 ぶっちゃけ今の俺でも仕事の依頼は大量にくるだろう。ただそれは、俺の珍しい見た目と"カレン・エインズワースの息子"という肩書きが有るから。それは全て俺が生まれた時から持っているステータスであって、俺が自分の力で手に入れたものでは無い。 カレンちゃんは元々イギリスの貴族の家系のお嬢様だ。特に生活で苦労する事も無い暮らしをしていた。それを17歳の時に急に"モデルになりたいから家を出ていく!"と言って家を飛び出したらしい。 モデルの経験は一切無く、苦労を知らないお嬢様が急な一人暮らし。大変じゃない訳が無い。そもそもカレンちゃんの家族はモデルになる事を反対しておらず、むしろ応援してくれていた。それでもカレンちゃんが家を出たのは、"自分の力でモデルになる為"。 家が有名な事はそれだけで世間の注目を集める。すると、本人の実力に関係無く、仕事が来るのだ。しかしそうして手に入った仕事では、成功しても『流石エインズワース家の人間』、失敗しても『エインズワース家の人間なのに』と世間の評価は自分へと向かない。 そうなるのを嫌がったカレンちゃんはデビュー当時"Karen"と、ファミリーネームを公開していなかった。

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